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『さらば財務省!』 高橋洋一著 [本]


さらば財務省! 官僚すべてを敵にした男の告白

さらば財務省! 官僚すべてを敵にした男の告白

  • 作者: 高橋 洋一
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/03/19
  • メディア: 単行本


よのなか度:★★★

2008年に出版され、同年の山本七平賞を受賞した本書。

著者が「コンテンツ(政策)クリエーター」として小泉政権下の竹中平蔵氏と共に行った郵政民営化や、財投改革、公務員制度改革、財務省の埋蔵金暴露など話題になった多くの出来事に絡んだ個人史の側面が強く、いくつかの本を補足的に読んだ方がベターだと思います。
ただ、当時読んでいたら、もっと面白かったんだろうなと思うと残念です。


今回、特に関心を持ったのは、官僚の志についてです。

どうして官僚は、少なからず坂本龍馬のような志を持って入省したはずなのにもかかわらず、いつの間にか国民や国家のことは放っておいて、自分の身の振り方や自省の権益拡大ばかりに注力するようになるのでしょうか。

この本でキャリアの本音が伝わってきます。

官僚を目指す若ものの気持ちは、もっと純粋だ。国の政策にタッチできる素晴らしい仕事だと、夢と希望を膨らませ、入省してくる。有名大学を卒業して、官僚になる人間には、それなりの自負がある。初めから落伍した後のことを考えるものなどいない。
そんな無垢な心が、ややもすれば、年をとるにつれ、薄汚れていく。先輩に吹き込まれたり、現実に直面して、打算が働くようになるのだ。われわれぐらいの年代になれば、もう先が見えている。老後を考えれば、天下りほどありがたいものはないとなる。


事務次官にのぼりつめられる人は同期の中でたった一人です。
役所を辞めざるを得なくなった脱落者にも、それなりの給与を保障しなければならない為、人事課が、役所の子会社ともいえる特殊法人、独立行政法人などに再就職を斡旋します。
先輩方の為に、天下り先を増やすことは「仕事ができる」とされ、いずれは自分の為にもなるのです。


省庁は次々に異動させる為にスーパーゼネラリストは作られますが、専門知識を持ったスペシャリストが養成されません。
その為、いざ外に出ようとしても、プライドだけ高くてコミュニケーション能力に欠ける、市場価値の無いオジサンになっています。

キャリアは、みな例外なくエリート意識を持っている。はっきりいえば傲慢だ。「日本で有数の頭脳を持つ、超エリートの自分が、一般の民間人より恵まれていてもどこが悪い」が、官僚の感覚で天下りにも罪悪感はない。


この本の著者のように、官僚を辞めて外部でコメンテーターやアドバイザーとして食っていける人間は一握りだけ。
それであれば多くの官僚は、入省当初の志などどこ吹く風で、省庁にしがみついて天下り先をせっせと作って、民間企業とは一線を画した所でそれなりに偉そうにやっていきたいというのが人情というもんでしょう。

子供もできて、家のローンを抱え、周りからの羨望も集め、相応の生活をしてきた人間は、その生活を自ら手放すことはできません。
しかし、経済の成熟化著しい日本で、社会主義のような手厚い保護は既に民間企業では失われ、今後官庁にもメスが入るのは当然の流れでしょう。


【あわせてどうぞ】
『官僚の責任』
終身雇用と年功序列社会の限界
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