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サピエンス全史 ユヴァル・ノア・ハラリ [本]


「サピエンス全史」期間限定セット【全2巻】

「サピエンス全史」期間限定セット【全2巻】

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2020/02/27
  • メディア: 単行本



前から気になっていたサピエンス全史。
コロナ禍のGWに読破。

結論から言うと面白かった!
そして、その後に読んだ「銃・病原菌・鉄」よりも、だいぶ読みやすかったです。

ただ、読みやすかった分、読みにくにかった「銃・病原菌・鉄」の内容ばっかり覚えてて、この本の内容はほとんど忘れてしまいました。。
思い出すのは、この本が私が大学生の社会学で習ったベネディクト・アンダーソンの「想像の共同体」を想起させる、ということ。

ブランド、宗教、ヒエラルキー、貨幣、法律、国家、社会、、、

これらは全て、サピエンス種族が認知革命によって想像を共有することによって産まれた虚構である。

このことがこの本が言いたいことのほぼ全てです。

もう一つ、昔読んだ「経済ってそういうことだったのか会議」も思い出しました。
これも読み易くていい本でしたね。


経済ってそういうことだったのか会議 (日経ビジネス人文庫)

経済ってそういうことだったのか会議 (日経ビジネス人文庫)

  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版
  • 発売日: 2002/09/03
  • メディア: 文庫



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銃・病原菌・鉄 ジャレド・ダイアモンド [本]


銃・病原菌・鉄 上下巻セット

銃・病原菌・鉄 上下巻セット

  • 作者: ジャレド ダイアモンド
  • 出版社/メーカー: 草思社
  • 発売日: 2010/12/10
  • メディア: 単行本



GWにサピエンス全史を読んだので、その勢いで購読。
この本のタイトルにある病原菌の話は時々出てきますが、銃や、鉄の話はほとんど出てきません。

アメリカ大陸の先住民はなぜ、旧大陸の住民に征服されたのか。ニューギニアに持ち込まれた発明品は数多くあるのに、なぜその逆は起きなかったのか。

その要因を様々な角度から検証していますが、この本で繰り返し語られる要点は以下の通り。
・世界中で生じている文明の差、富と権力の不均衡は人種の優劣の差では(決して)ない。
・まず栽培化や家畜化の候補となりうる動植物種の分布状況が大陸によって異なっていた。狩猟生活から、農耕生活への移行が余剰作物の蓄積を可能にし、余剰作物の蓄積が非生産者階級の専門職を養うゆとりを生み出し、人口が密集した大規模集団の形成を可能にした。
・次に、そうした農作物や家畜の伝播や拡散の速度は、緯度が同じ東西方向に伸びるユーラシア大陸が有利であり、陸塊が南北方向で途中に砂漠で分断されているアフリカ大陸や、緯度の違いによる寒暖の差が大きく、パナマのあたりでくびれているアメリカ大陸、そして島々に分かれているオセアニアでは遅くなった。
・最後に、それぞれの大陸の大きさや総人口の違いで、面積の大きな大陸や人口の多い大陸では、何かを発明する人間の数が相対的に多く、技術の受け入れを促す社会的圧力もそれだけ高い。

以上より、昔は砂漠ではなく肥沃な農業地帯であったメソポタミア地域とそこから拡がったヨーロッパや、中国が相対的に有利であった、というものです。
こうして考えるとエルサレムにユダヤ教、キリスト教、イスラム教の三つの聖地が集中していることも少し納得がいきました。


この本で言っていることが全て正しい、と言うわけではないでしょうが、サピエンス全史と合わせて人類史を俯瞰して考えられる面白い本でした。

この本を読んだ後に、夕食時に子供の顔を見てフト思いました。

人生は、遺伝子の、旅である。
人類史は、遺伝子の、壮大な旅(グレートジャーニー)なんだ、と。


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学問のすすめ 福澤諭吉 [本]


現代語訳 学問のすすめ (ちくま新書)

現代語訳 学問のすすめ (ちくま新書)

  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2013/09/13
  • メディア: Kindle版



渋沢栄一氏の「論語と算盤」が良かったので、古典を読もうと思って、福澤諭吉の「学問のすすめ」を今度は読みました。
渋沢栄一は「氏」がつけられますが、福澤諭吉は福澤諭吉ですねw

それぐらい一万円札と慶應義塾大学で有名ですが、それ以外は何も知らないことに気付きました。
もっと官寄りの人かと思っていましたが、もの凄く民寄りの人だということをこの本を読んで初めて知りました。

「実用性のない学問はとりあえず後回しにし、一生懸命にやるべきことは、普通の生活に役に立つ実学である」と、とっても庶民的なことを、「天は人の上に・・・」で始まる同じ冒頭に言っているのです。

「仮に政府に対して不平があったら、それを抑えて政府をうらむより、それに対する抗議の手段をきちんと取って遠慮なく抗議をするのが筋である」。
「物事の筋道を知る為には、文字を学ばなければいけない。だから、現在学問が緊急に必要とされているのだ」と、明治維新が終わり、士農工商の身分制度がなくなった今、自分自身の努力で自らの道を切り開き、自分の社会的役割をきちんと認識すべきである、と当時の庶民に対して啓蒙したのです。

それが当時の人々にとっては、これからの生き方を示す道標のように思えたのでしょう。
この「学問のすすめ」は70万冊以上売れるという大ベストセラーになったのです。

基本的人権や、政府と人民の約束(社会契約論〕を、事例を出しながら、平易な言葉で分かり易く解説しています。
「人民が暴力的な政治を避けようとするならば、いますぐ学問に志して、自分の才能や人間性を高め、政府と同等の地位にのぼるようにしなければならない」と、庶民側の立場で学問の目的を語っています。

受験勉強をしている時など、何の為に勉強をしているのか分からなくなったりしますが、その本質をこの本では語っています。

なお、渋沢栄一氏の「論語と算盤」では、人民の依るべき道徳、指針を中国の論語に求めていましたが、この本の中では「論語読みの論語知らず」のような学者を散々小馬鹿にするような表現が出てきます。
孔子が生きていた時代と、現代では時代背景が大きく異なっているにも関わらず、論語に出てくる言葉を一言一句重視するのは実用的ではない、と看過しているのです。

そんな小気味よい語り口で書かれた(現代語訳された)この本は、現代人にとっても一読に値するでしょう。


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論語と算盤 渋沢栄一 [本]


現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書)

現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書)

  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2014/01/10
  • メディア: Kindle版



日本資本主義の父と呼ばれる、渋沢栄一氏が日本で商売重視の資本主義が広まっていくに当たり、人として依るべき考え=道徳を、中国で孔子とその弟子達との言行をまとめた「論語」に求めました。

この本自体、今から100年以上前に書かれたと思えぬほど、ビジネス書としても秀逸な内容です。

資本主義は自分の利益さえ上がればよい、という考えに陥りがちですが、人として、社会の一員として利益と道徳の両立を語っているのは、今でいうESG、SDGsの考えにもつながっています。

それは2千年以上前に書かれ、今なお東洋思想に大きな影響を与えている、論語という、人としての道理に沿っているからでしょう。


この本ではよく徳川家康公のことが引き合いに出されています。
有名な遺訓として、以下が紹介されています。

「人の一生は、重い荷物を背負って、遠い道のりを歩んでいくようなもの、急いではならない。
不自由なのが当たり前だと思っていれば、足りないことなどない。心に欲望が芽生えたなら、自分が苦しんでいた時を思い出すことだ。耐え忍ぶことこそ、無事に長らえるための基本、怒りは自分にとって敵だと思わなければならない。
 勝つことばかり知っていて、うまく負けることを知らなければ、そのマイナス面はやがて自分に及ぶ。自分を責めて、他人を責めるな。足りない方が、やり過ぎよりまだましなのだ」

有名な一行目は聞いたことがありましたが、あの家康公でさえ、こんな我慢していたのだと思うと、会社やビジネス上で腹が立って感情のまま行動しそうな時に、グッと耐えることなんて、何でもないことと気付かされます。

ちなみに、この家康公の言葉のほとんども論語からきていると、渋沢栄一氏は解説されています。

論語では、
「指導的立場にある人物は、広い視野と強い意志力を持たなければならない。なぜなら、責任が重く、道も遠いからである。」
とあり、リーダーとしてストレスを感じるのは当然のこと、と語られています。

他にも、
・後輩を厳しく指導するのは本人のため
・逆境に立たされたら、自分の本分と覚悟を決めよ
・得意な時に調子に乗るな
・些細なこともつまらない仕事と疎かにするな
・一生涯を通じて「大きな志」からはみださない範囲の中で工夫する
・智、情、意のバランスを取れ
・お金はよく集めて、よく使い、社会を活発にしよう
・自分を磨くことは、現実の中での努力と勤勉によって、知恵や道徳を完璧にしていくこと。しかもそれは自分一人のためばかりでなく、一村一町、大は国家の興隆に貢献するものではなくてはならない

など、今でも十分通用する金言がたくさん載っています。


更に女性活躍にも積極的で、人口の半分は女性だからと、現在の女性活躍に繋がるところもあります。
本人は女性関係だけは、だらしなかったそうですがw


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ウツクシイ時代 [本]

僕が大学生の頃、椎名誠さんの本を読み漁っていました。
怪しい仲間達と日本全国世界各地を飛び回ってる姿を、ウケケケと言いながら、読んでいたもんです。

そんな中読んだ、椎名おとうと、息子の岳君の温かくもウツクシイ時代を描いた「岳物語」「続岳物語」が読み返したくて、この夏休みにブックオフで買いました。


岳物語 (集英社文庫)

岳物語 (集英社文庫)

  • 作者: 椎名 誠
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 1989/09/20
  • メディア: 文庫




岳物語 (続) (集英社文庫)

岳物語 (続) (集英社文庫)

  • 作者: 椎名 誠
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 1989/11/01
  • メディア: 文庫



オトウと息子のウツクシイ時代は大学生の頃読んだ記憶より短くて、あっと言う間に少年は自立の時を迎えて、オトウを見放していくのです。

私の息子リクとミナトの2人揃った黄金期は、リクが小学校高学年になるくらいまでの後3年ぐらいかなーとなんとなく思っているのですが、この本で予習する限り、それは大きく外れていないかもしれません。

岳物語で、一番濃密で温かい時間を過ごしているのは、親子で三宅島や伊豆に釣りに出かけた時です。
その記憶が残っていたこともあり、リクとは今度沼津の方に釣り合宿で民宿に泊まれたらいいなと夢想する日々です。

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プライベートバンカー [本]

久しぶりに自分用に本を買いました。
2人目の子供が生まれてから心の余裕が無く、全く本を買ってなかったので、2,3年ぶりになります。

去年は本当に忙しかったなー。
買収案件を一件クロージングさせたと思ったら新しい買収案件がスタートし、その合間に海外支店を設立したり中期経営計画の骨子を作成、更に自社と同程度の大型買収案件プロジェクトに参画したり。。

家に帰っても、湊の夜泣きがあったり、それで奥さんも寝不足になって、気の休まる時がなかったり。
子供2人で風邪を移し合い、その度に陸が中耳炎になり高熱を出したり。


普段は子育てと仕事で疲れて、そもそも本屋に行く余裕さえありませんでした。
今回父親の法要で1人帰省することになり、久しぶりに1人になる時間が出来たので、新大阪駅構内の本屋に立ち寄り、面白そうな本を見つけたので手に取ったのです。


「プライベートバンカー」。
山一証券の最期を描いた「しんがり」の作者である、清武英利さんの最新作です。

あの巨人のナベツネさんとやり合って、有名になった方ですね。
個人的に富裕層と付き合うプライベートバンカーに興味があったのですが、普段中々内実を知る機会がないので、買いました。

主人公は元野村証券の営業マン。
野村証券に嫌気をさして、シンガポールのプライベートバンカーに就職し、自分の顧客を横取りしようとする上司との戦いに奮闘します。

終盤は、主人公の物語から離れてしまい、あれれと言う感もありますが、富裕層は富裕層なりの悩みや孤独と向き合う場面は興味深いです。
ちなみに主人公は実名の実存する人物だと言うからスゴイ!


夜泣きだったり、国税からの泣き寝入りだったり、みんな色々な悩みを抱えているものです。




プライベートバンカー カネ守りと新富裕層

プライベートバンカー カネ守りと新富裕層

  • 作者: 清武 英利
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/07/13
  • メディア: 単行本



『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』 原田 曜平 [本]


ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体 (幻冬舎新書)

ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体 (幻冬舎新書)

  • 作者: 原田 曜平
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2014/01/30
  • メディア: 新書


★★★★

僕の地元は兵庫県明石市ですが、子供の時から広い世界を見てみたいなーと思っていたので、まずは日本の中心である東京、できれば海外でも仕事をしたいと夢見ていました。

今は東京に住んでおり、時々海外の仕事にも絡むので、僕のささやかな夢は叶ったと言えますが、一方で生まれた時から地元を出ず、一生地元で暮らす人を不思議に思っていました。
もっと外の世界を見たいと思わないんだろうか、と。

その人達は昔のように親の仕事をつがないといけないとか、経済的理由でというものではなく、自ら進んで地元にいるのです。
僕の兄二人もそうです。

しかも、今、そういう人達は増えています。

昔は憧れであった東京や大阪の大都市も、現在では情報の発達により、地元にいながら同じ情報が手に入るようになりました。
また、各地に立てられたショッピングモールに行けば、物理的にもそこそこの物が揃っています。

わざわざ都会に行く必要性を感じなくなり、自ら進んで地元にいて、小学校・中学校くらいの友達との絆を何より大切にする人達を、この本では「マイルドヤンキー」と定義しています。

「ビーバップ・ハイスクール」や「ろくでなし・ブルース」に出てきたバリバリのヤンキー1.0は、残存ヤンキーとして今も残っていますが、数は多くありません。
「池袋ウェストゲートパーク」で描かれたようなチーマーやカラーギャング達ヤンキー2.0はいなくなり、今はマイルドヤンキーがヤンキー3.0という訳です。

その変化は経済情勢とリンクしていると著者は言います。

バリバリのヤンキーが生まれた70~80年代は、日本がバブル景気に向かう時で大人は金儲けに忙しく、エリート社会人を効率的に生み出す為に、79年にセンター試験制が導入され、社会はどんどん学歴至上主義化していきました。
そうした制度に馴染めなかった者は、「落ちこぼれ」として邪魔者扱いされ、そんな制度を作った大人達は憎むべき対象でした。
夜中に窓ガラスを壊し、盗んだバイクで走り出し、いかにも悪いですよ、という格好で自らを社会に認めて貰う必要がありました。

チーマー達の時代は、情報過多の時代に自分は何者なのか分からなくなり、都会に出てキャラ設定をすることで自己顕示欲を満たしました。

ところが、バブル経済がはじけ、ゼロ年代以降の大人達は完全に自信を失い、脆弱な存在に成り下がっていましま。
反抗する必要もない大人なので、親と実家暮らしすることにも全く抵抗はなくなったのです。

マイルドヤンキーと聞いて昔のヤンキーをイメージすると違和感がありますが、地元が大好きな「地元族」が増えていると考えると納得できます。
ネットの発達、社会・経済の成熟により、グローバル社会で活躍する社会人が増える一方で、地元に閉じこもり満足感を得る人が増えており、今後の日本の消費動向を考える上で重要という視座は非常に興味深いですね。
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『(株)貧困大国アメリカ』 堤 未果 [本]


(株)貧困大国アメリカ (岩波新書)

(株)貧困大国アメリカ (岩波新書)

  • 作者: 堤 未果
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2013/06/28
  • メディア: 新書


★★★★

やっぱり、面白い。

『貧困大国アメリカ』で、我々日本人が潜在的に持っている、アメリカへの憧れや豊かな超大国というイメージを壊してくれました。

本作では、農業をメインテーマに、政府が企業に懐柔される様を描いています。

ただ、この面白さは掛け値なし、という訳ではありません。

データが恣意的であったり、数字の後付けが薄いと感じるからです。
例えば、政治献金なんてアメリカでは多かれ少なかれ、どこでもやっていることで、その額と全体に占める比率を示して貰わないと、説得力がない。

それでも、数字の羅列となって学術書みたいな無味乾燥さはなく、一貫して「99%」側に立つ、ノンフィクションとしての面白さがあります。

グローバル社会になれば、政府が国を超えて活動する優良企業をいかに誘致するかが重要となり、企業側は肥大化する企業規模により、政府に対する発言権も強くなります。

これを読むと、日本で農業の大規模化の必要性が語られていますが、アメリカの超大規模農業により、TPPが成立すれば、蟻と象のように一瞬で日本の農業が踏みにじられる危険性があるのがよく分かります。

半年間アメリカに行ってよく分かりしましたが、アメリカには食育という概念が中流以下には存在していません。
その点、豊かで健康的な食生活を手に入れられる日本は、これ以上ない幸せな環境なのです。

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『魂の経営』 古森 重隆 [本]


魂の経営

魂の経営

  • 作者: 古森 重隆
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2013/11/01
  • メディア: 単行本


★★★★

2011年にチャプター11(米国連邦破産法11条) を申請したアメリカのコダック。
2007年に最高益を計上した日本の富士フィルム。

かつて写真フィルム事業を主力とした2社の業績が非常に対照的で、富士フィルムが取った経営戦略に関心がある人は多いはず。
本書は2000年に富士フィルムの社長に就任した著者が、デジタルカメラの出現によって、主業の写真フィルム市場が年率2-30%もの勢いで消滅する会社の危機を、いかに乗り切ったかを語ったもの。

戦略はシンプルで、富士フィルムが持っていた強みである高い技術を棚卸し、既存市場、新規市場に当てはめて「勝ち続けられる事業」に経営資源を投資。
一般消費者向けには、富士フィルムが始めた化粧品ブランド「アスタリフト」が認知されていますが、一番大きかったのは液晶テレビに使われる偏光板保護フィルム向けの投資を、テレビの趨勢がプラズマテレビか液晶テレビになるか分からなかったタイミングで、大きく踏み切ったことでしょう。

コダックと富士フィルムが決定的に異なっていたのは、両者ともデジタル化の流れを分かっていながら、前者はあくまでも短期の利益に目を奪われて将来的な投資ができなかった一方、後者はデジタル化に向き合い、デジタル製品の開発にも積極的に取り組んでいたことです。
その証拠に、苦しい時期にも、年間2000億円の研究開発費を捻出し続けました。

戦略や経営理念を含蓄のある言葉でシンプルに語る本書は、ヤマト運輸の小倉昌男氏の名著『経営学』に通じるものがあります。
個人的には、以下の言葉が心に残りました。

企業の存亡の危機に際して、改革に反対する社員はいなかったし、もしいたとしても、やらなければいけないことを躊躇する要因にはならない。そんなことを気にするようでは、リーダーは務まらない。
ビジネスもある意味、勝つか負けるかの戦争であるが、どこの世界に、個々の作成遂行にあたって、兵隊一人ひとりの考えを慮って戦う指揮官がいるのか。また、敵軍が迫っている中、指揮官の命令に反発する兵士がどこにいるのか。


責任を持った判断をする為に、リーダーはしっかり流れを「読み」、未来を予測しなくてなりません。
その為に日頃から、「読む」訓練を続ける必要がある、と説く本書は、リーダーにも必見の書です。


小倉昌男 経営学

小倉昌男 経営学

  • 作者: 小倉 昌男
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 1999/10
  • メディア: 単行本



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『桐谷さんの株主優待ライフ』 桐谷 広人 [本]


桐谷さんの株主優待ライフ

桐谷さんの株主優待ライフ

  • 作者: 桐谷 広人
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2013/10/01
  • メディア: 単行本



東京の街を、立ち漕ぎ自転車で猛スピードで疾走する中年のおじさん。
目指す先は、株主優待で無料もしくは格安で使えるお店の数々。。。

最近、テレビでこうした桐谷さんの姿を見た方は多いんじゃないでしょうか。
僕も最近テレビでチラッと見て「なんだ、この面白いおじさんは!」とビックリしました。

一方で、株主優待の期限に追われ、アクセク東京の街中を自転車で走り回る姿は憐れでもありました。
そうした興味があったので、桐谷さんの書いた本を読んでみました。

まず驚かされるのは、本人も書いているように、アイドルの本みたく写真が随所に散りばめれ、ビジュアルライズされていること。
確かに、桐谷さんの生活、気になりますわな^^

更に驚くのは、桐谷さんは元プロ棋士だったんです!
「新手一生」で高名な升田幸三名人の弟子で、現役時代には「コンピュータ桐谷」の異名を取った、理論派棋士なんです。

現役時代から財テク棋士として知られ、2006年時点で時価3億円分を保有していましたが、リーマン・ショックや信用取引が裏目に出て、2013年時点で株式の時価は約5000万円にまで激減するという、胃の痛む日々を過ごしてきました。
アベノミクスで株式時価は1億円までに回復し、ようやく信用取引からは足を抜けられたようです。

信用取引は自動的に損切りされてしまう為、証拠金として現金が必要になってきます。
当時は家族からお金を借りるなどして、急場を凌ぐのですが、そこで生活する為に持っていた株主の株主優待を使い始めたのです。

あの株主優待生活には、そんな重い過去があったのですね。
他にも、女性と一度も恋愛をしたことがないとか、赤裸々に語るその姿は、哀愁を通り越して可愛いですね。

アイドルみたいに、一杯写真が載っている訳が分かりました笑


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