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アメリカと比べても、日本のホワイトカラーの生産性は低い件 [よのなか]

以前、日本のホワイトカラーの生産性って低いけど、これでよく経済大国になれたな
考えたことがあり、じゃあアメリカってどうなのかよと思っていたのですが、少し理解できました。

<アメリカ人の働き方>
アメリカ人はスペシャリスト志向の為、その職を持って会社を転々とする
 (「今の会社で7社目だよ」とか、「会社を立ち上げて、その会社を他社に売却して今の会社に
  来た」とかザラです)
家族第一主義の為、自分の仕事が終わったらサッサと帰る
 (車通勤ということもありますが、チーム単位での飲み会とか一切無し。3連休前の17時(!)
  に、気付いたら僕と社長しか会社に残っていませんでした)
業績が悪かったり、成績が良くなかったらすぐに辞めさせられる
 (人の入れ替わりがやたら激しい。気付いたら新しい人が入っているし、毎月送別会ランチ
  があります)

アメリカ人は女性の就業比率が高く夫婦共働きで、子供も車が無いとどこにも行けない為、
就業時間内で終わらせようと結構集中しています。
そして、スペシャリストの為、生産効率も高いのです。

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一方、日本人は、ジョブローテーションを行う為、学習効果がリセットされる。
原則正社員はクビにできない為、余剰人員を抱えてしまう。
周りをはばかって遅くまで働く(もしくは働いたフリをする)。
しかも、遅くまで働いた後に、同僚と飲みに行く為、翌日以降の仕事に響く。

その為、生産性は決して高くありません。

中学高校の時の部活終わりとか、バイト上がりの休憩室を見てもそうですが、日本人は話し
ながらグダグダするのが好きなのです。

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成長戦略にみるデフレの原因 [よのなか]

「新たな」成長戦略が策定されました。

ここ数年、前の民主党政権下でも、その前の自民党政権下でも、成長政略が作り続け
られています。
通常「戦略」とは数年程度のロードマップで描かれますが、毎年首相が変わる毎に作り
直されています。
官僚の皆様、お疲れ様です。

こうなってくると、そもそも「戦略」って何だっけ?ていう話になってくるのですが、
私の理解では「戦略」とは、「方向性の提示と外部環境を把握した経営資源の適正な配分」です。

つまり、進むべきゴールを指し示し、選択と集中を行うことです。

一般的に人口減による国内市場の成長が見込めない日本(移民政策は日本の国民性や歴史を
考えると難しいですし、日本の強みである高度な均質性が失われて、混乱を招くだけなので、
すべきではないと考えます)では、成長する為には海外市場からパイを取ってくるしかありません。

その為には、「国内での新陳代謝を促進し、イノベーションを活発化し、グローバルで活躍できる
企業・人材を多く育てること」が肝要となります。


アメリカは冷戦の終結により、経済のグローバル化にシフトしました。
新自由主義を礼賛している訳ではありませんが、世界のルールはここアメリカが主導しています。

グローバル資本主義の本質は、競争相手が未熟で、消費者がたくさんいる市場=新興国市場から
収益を吸い上げることです。
民間企業による帝国主義と言っても差し支えないでしょう。
その為には、相手国には保護主義政策は撤廃して貰い、自由貿易の方が都合がいいので、
TPPなどが推進されます。


さて、首相官邸において発表されている<成長への道筋>を見てみましょう。

g03.jpg

・民間の力を最大限引き出す
・全員参加、世界で勝てる人材を育てる
・新たなフロンティアを作り出す

「おお、正にその通りだ」と思うのですが、ここからのブレイクダウンが良くない。

ロードマップや中短期工程表を見てみると、いかにも総花的です。
戦略の要諦は、「選択と集中」にも関わらず、です。

詳細プランの落とし込みは、各省庁の官僚が作成します。
(官僚を無視すると、はっちゃかめっちゃかになると民主党政権が証明してくれました。)
各省庁には、もちろんそこで働く官僚の皆様もいますし、地元の支援を受けた族議員が存在し、
その下には大企業がぶら下がり、そこには大勢の社員と無数の中小企業をぶらさがっています

それらの雇用や利権や秩序を考えると、各省庁が上げてきたプランを切ることができず、
結局は全て盛り込む形となってしまいます。
自民党は長年、農家や医師、企業などによる業界利益団体に依存してきましたので、
7月に参議院選挙が控えている手前、大胆な手法は取りにくいという事情もあります。

自然と、「イノベーションのジレンマ」、「成功は復讐する」という言葉が浮かんできます。

ブレーンとなる官僚自身、組織に属している以上、自らの組織や出世を否定することは不可能です。
なんとか新しい予算を獲得し、先輩社員の行く末を案じ(トップの事務次官は同期で一人しかなれ
ない)て、出向先を作り出して上げなければなりません。

人は、精神が異常でない限り、カッターで自らの身体を傷付けることはできません。
つまり、誰が悪いとかではなく、日本はもっと追い詰められない限り、自ら変わることはできない
のです。

個人でできることは、国に頼らず、グローバル企業に雇われるか、自らグローバル人材となるか、
国内の競争に巻き込まれにくい高収益なニッチ市場もしくは寡占市場で生きていくことです。
「幸せって何だっけ?」と問い直して、収入一辺倒ではない多様な価値観の中で生きることも
一つです。

デフレの原因は、人口減やら色々言われていますが、自ら変わることのできないジレンマに陥った
日本の将来を悲観して、高齢層が自己防衛の為に貯め込んだお金を使わず、若年層が堅実な
生き方を志向しせっせと貯蓄して消費しない為に、企業の設備投資に結びつかないことが、
一番の要因ではないかと思います。

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官僚制の成り立ちと勃興 [よのなか]

融通の無さの代名詞として使われる「官僚」。
日本におけるその成り立ちをちょっと振り返ってみました。


近代日本の官僚制は明治時代の始まりと共に成立しました。

当時の日本の性質として、後発国としての高度成長の養成から中央集権制度の確立が求められ、それを安定的かつ集権的に行う重要な主体の一つが官僚でした。

司馬 遼太郎 『翔ぶが如く』にみる官主導の原点

山本七平氏の『派閥の研究』の中で、その点に言及しています。
「明治の初めのうちは、藩閥という横のシステムが機能していて、伊藤博文の子分は大蔵省にいれば商工省にもいる、陸軍省にも外務省にもいるということになっていましたから、伊藤博文が『ちょっと来い』といえば色んな省から人間が集まってきた。したがって、縦の原理と横の原理のバランスがあったと思うんですね。ところが、高文制が明治26年から始まって2,30年たちますと、選抜制でやってますから、藩閥がなくなってくる。・・・藩閥色が急速に薄れて、そして各省縦割りになって横の原理がなくなってくるわけですね。藩閥についで現われた横の原理が政党政治であって、これが藩閥をリプレースして『おれが横の原理である』と叫んだわけですけれども、不幸にして日本の政治政党は失敗してしまいました。」


「派閥」の研究 (文春文庫)

「派閥」の研究 (文春文庫)

  • 作者: 山本 七平
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1989/09
  • メディア: 文庫



藩閥に対抗して出てきた自由民権運動、それを基にしてできた自由党は、一種の「対抗藩閥」という形にならざるを得ませんでした。
この派閥的政党政治は失敗し、次に軍閥が登場します。
軍という官僚組織が日露日清戦争後から満州事変と経て、官僚の中でも台頭し始め政策形成に強い影響を持つようになり、第二次大戦に突入します。



そして第二次大戦後、広い権限を持った内務省解体など戦前の官僚機構は解体され、戦犯や思想による公職追放などは行われました。

戦勝国であり占領国であったアメリカは社会主義陣営との冷戦の激化において、復興のための政策形成を行う主体として、保守政党と官僚にそれを求め、傾斜生産方式など中央集権的な政策形成を行いました。
このように戦前は後発国、戦後は戦災国として高度成長を外的内的な要因から要求され中央集権的に政策形成を行ったのが官僚でした。

戦後の日本は、憲法から、教育制度、農地解放、税制改革≪シャウプ税制≫に至るまで、いわば、アメリカが次々に押しつけた服に身体をあわせ、見事に着こなしてきた。そのしたたかさ、柔軟性にかけては日本人は見事で逞しい。
だが、アメリカと日本との関係が大きく変わり、服を推し付ける、それを着こなすというかたちではなく、自前で自分の服をつくらざるを得なくなった。
自前で土台作りから、未来ビジョン策定までしなければならなくなった。
また、国際経済摩擦の激化から、農水、通産、郵政、大蔵など、それぞれの官庁の利害が相反して、これまでのように”省あって国なし”の縦割行政では二進も三進も行かなくなって来た。
戦後、占領軍の押付けを、日本流…日本官僚の”運用”=したたかな柔軟性で処理し、逆に飛躍のバネとして来たのが、随所で矛盾、軋みを生じはじめたのだ。   田原 総一朗 『平成・日本の官僚』より


最近では、官僚制の逆機能が目立ってきています。

官僚制の逆機能とは、

•組織全体よりも自分自身の所属する利益が優先されて全体の利益につながらない
•組織の力と自分の力を混同し,外部に対して威圧的な行動をとる
•規則や命令をかたくなに重視すると、それさえ守りすればよいということで、内部では形式主義、事なかれ主義になる

本来は合理的な管理・支配の制度として生み出された官僚制が、様々なマイナスの効果(逆機能)が出てくるというものです。


これは官僚制だけでなく、どんな組織にも言えることです。
設立から長くなればなるほど、大きくなればなるほど、組織は「官僚的」になっていきます。

ただ、大蔵省のノーパンしゃぶしゃぶ以降、官僚は叩かれ過ぎな気がしますけどね~。


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日本の国債はいつまで消化できるのか [よのなか]

アベノミクスによって、益々国債残高は増えていきそうです。
既にGDP比の政府債務残高は先進国トップクラスだというのに、いつまで国債は消化できるのでしょうか。

【債務残高の国際比較(GDP比)】
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「政府純資産残高は250兆円あるから大丈夫」
「日本の国債は95%が国内で消化されているから大丈夫」
「金利が上がっても国債残高のほんの一部の金利が上がるだけなので大丈夫」
「家計の金融資産は1,400兆円あるから大丈夫」
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こういった論点はよく聞かれ、確かにその通りです。
財務破綻懸念を煽るのは、財務省が増税をしたいという思惑があるからだというのも納得できます。
ただ、確かに当面はダイジョーブなのですが、いつまでもこの状態が続けられる訳ではありません。


個人の金融資産は銀行・郵貯や保険年金基金などを通じて、国債購入に充てられています。
2011年末時点の日本国債の発行残高は755兆円で、保有者の割合は、民間銀行が36.3%、生損保が22.4%、社会保障基金が9.35%、日本銀行が8.95%、年金基金が3.77%、日本国外が6.74%となっています。


昔、銀行員は貸し出すお金が無くて、預金集めに汗水垂らしていたというのが全く想像できないくらい、今は貸し出す先がありません。
預金から貸出に回っている比率を「預貸率」と言いますが、預貸率は低迷しています。
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その余った資金は眠らしておく訳にはいきませんので、金融機関が金利が1%前後の国債を購入しています。
つまり、個人が直接国債を保有している金額は35兆円程度に留まっていますが、個人の預金が金融機関を通じて国債購入に回っているのです。

***

景気対策、復興対策により、収入と支出の差は開く一方です。
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なにより社会保障費の国庫負担は増加し続けています。

プレゼンテーション111.jpg


今後については、貯蓄率の低下による国債の国内消化余力の低下、企業の借入需要の増加による金融機関からの借入主体の政府から民間への移行(預貸率の上昇)、日銀による国債借入枠の減少、経常収支の悪化などにより、2020年から2030年の間には国内での国債消化率が下がり、国外からの調達による不安定さと金利の上昇リスクは避けられないかもしれません。


こうした事態を予測して、各銀行は日本国に対する与信リスクを計るようになってきました。

三菱東京UFJ銀行 H22年4月
三菱UFJ信託 H24年5月

あえてこういう時期に日本のトップ財閥である三菱系の銀行から資料が公表されるのは、政府への警告でしょうか。
それとも日本国が沈没しても三菱は生きていくという、したたかさの現われでしょうか。

いずれにしても、もうしばらくすると、日本国に対する手放しの与信は通用しなくなってきます。



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これからの若者は自分が何で飯を食っていくか戦略的に考える時代になった [よのなか]

バブルが崩壊する辺りまでは、大きな組織に入り役員になることが成功の定義でした。
起業が盛んだった終戦後と高度成長期を経て日本の会社組織は成熟し、「年功序列・終身雇用システム」として落ち着いていったのです。


しかし、市場は成熟し、終身雇用と年功序列社会も限界を迎えます。

>終身雇用と年功序列社会の限界

90年代半ばから2000年初めに、働き方が大いに変化します。

正社員を抱える余裕がなくなった企業は、正社員は基幹業務限定とし、その他の業務は有期雇用労働者(派遣やパート)でまかなうようになりました。
メディアもそんな企業を後押しするかのように、それまで「無職」「プー太郎」と呼ばれ蔑まれがちだった若者達に、「夢」を追いかけるものは素晴らしいと「フリーター」という称号を与えバックアップしました。

>7割は課長にさえなれません ~終身雇用の幻想~


同じ頃にITの普及により、能力を持っている人はそれを最大限に活用すべく転職が当たり前となり、より多くのチャンスを求めるために、外資系企業も選択肢の一つとなりました。
政府の規制緩和によって、「できる人間は起業を目指せ!」の声も高くなり、IT業界を中心にベンチャーブームが起きました。

この頃、就職氷河期を経て不本意な企業に入社した若者や、大企業の倒産を目の当たりにした若者は、自分自身のスキルを上げてどこでも通用するようになりたい、ステップアップしたいというニーズが高まっていきました。
そのニーズを汲み上げたのが、先述の勝間さん達という訳です。


その後、ITバブル崩壊、リーマンショックによる外資系企業の日本撤退、派遣切り問題などを経て、再び「寄らば大樹の陰」と、大企業や公務員志向が強まり「狭き門」に殺到しています。


今後は多様な働き方の中で幸せを見つけていくことが求められており、若者が飯を食っていくことは以前より単純ではなくなってきています。

>格差社会を無くし、幸せを増加させる為に必要なこと

選択肢が多いっていうことは、それだけ悩みが増えますが、豊かなことでもあります。


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原発は徐々に復活されていく [よのなか]

火力発電の燃料となるLNGの輸入額が増加し貿易赤字になっている現状では、円安が必ずしも日本にプラスをもたらす訳ではありません。

これは円安がプラスとなる輸出産業にとっても、電力価格高騰→生産コスト上昇→競争力減少→利益減少につながる為、由々しき事態です。


これを回避する手段は、「原発復活」です。


現に、圧倒的過半数を獲得した自民党政権では、安部首相が年末に「これまでと全く違う」という括弧付きながらも、原発新設に言及しました。

世論の反応を見て、年明けに発言をやわらかいものに修正しましたが、確実に政府は原発復活を考えています。

直近では原発の新しい安全基準を検討している原子力規制委員会が、地震や津波、テロなどに伴う過酷事故対策の骨子案を示しました。
今ある原発の運転室(中央制御室)とは別に、原子炉の冷却やベント(排気)が遠隔から操作できる「第2制御室」の設置などを盛り込んだものです。

こうして除々に除々に、人々の意識に原発再稼動へのシナリオが刷り込まれていきます。


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「人の噂も75日」というように、不祥事を起こした芸能人や企業がしばらく謹慎して人々が出来事を忘れ去った後に、何事もなかったかのように復活するということはよくあることです。
メルトダウンという衝撃的な出来事を目にした後では、さすがに原発の恐怖は75日では記憶から消すことができませんが、今後徐々に記憶から薄れていくことは間違いありません。

個人的に、原発のメリットもデメリットも感じる為、原発への賛否を未だに決めかねているのですが、「原発反対!」の方はしっかり政府の動きやそれを支える経済界や、メディアの誘導をチェックしておかねばなりません。




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ノモンハン事件からの教訓 『昭和史』半藤一利著 [よのなか]

半藤一利さんの『昭和史』を読んで、「成功は復讐する」という言葉をつくづく思い出しました。

『昭和史』で取り上げられているノモンハン事件は、最近「超」入門本が出て再び話題になっている『失敗の本質』でも分析対象とされています。

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

  • 作者: 戸部 良一
  • 出版社/メーカー: 中央公論社
  • 発売日: 1991/08
  • メディア: 文庫


『失敗の本質』では、逆説的ですが、「日本軍は環境に適応しすぎて失敗した」のではないか、という提議を行っています。

日本は明治維新後に「坂の上の雲」を追いかけ、徹底的なリアリズムで日清戦争、日露戦争で大国を破り、先進国の仲間入りを果たしますが、その成果に陸軍・海軍は固執し過ぎたというのです。

人は失敗した原因を探して、同じ過ちを繰り返さないように対処します。
しかし、成功した場合は、成功に至った過程を評価し、より強化しようとします。

2つの戦争で最終的には成功した、陸軍は白兵戦による銃剣突撃主義、海軍は艦隊決戦主義が強力な戦略原型(パラダイム)として存在しました。

日本は第一次大戦という近代戦を組織全体がまともに体験しなかった為に、自己革新する機会を失い、そのパラダイムを打ち捨てることなく、むしろ強化しました。

成功は復讐したのです。


***

しかし、そんな日本にも転換するチャンスはありました。
火力で圧倒的に負けたノモンハン事件の敗北です。
実は当時もその反省を生かすべく、委員会まで設置されて敗因を研究していました。

事件の翌昭和15年1月、陸軍中央、つまり参謀本部で、ノモンハン事件から何を教訓とするかについて研究会というか、大々的な反省会が行われました。「ノモンハン事件研究委員会」というものが設置され、専門家である参謀や、事件には直接関係のない参謀たちも携わって、いろいろ検討したのです。作戦計画や戦闘そのものの調査研究はもとより、統制・動員・資材・教育訓練・防衛および通信・ソ連軍情報など多岐にわたるものでした。たとえばその報告書には、
「・・・火力価値の認識いまだ十分ならざるに基因してわが準備を怠り、国民性の性急なると相まち誤りたる訓練による遮二無二の突進に慣れ、ために組織ある火網により甚大なる損害を招くにいたるべきは、深憂に堪えざるところなり。」

と、今の私達が見ても非常に冷静かつ的確な分析をしているのです。

しかし、報告はこのあとに、「優勢なる赤軍の火力に対し勝を占める要道は一に急襲戦法にあり」と、せっかくの正しい判断をぼかしてしまうのです。

その結果生まれた結論は、
「ノモンハン事件の最大の教訓は、国軍伝統の精神威力をますます拡充するとともに、低水準にある火力戦能力を速やかに向上せしむるにあり」。

このことを半藤氏が旧陸軍にいた人に話を聞くと、『火力戦能力を速やかに向上せしむるにあり』という一行を書くことも当時では大変なことで、これを書いた参謀の人たちは飛ばされるのを覚悟でよくここまで書いた、となるようです。

***

成功したばかりにイノベーションを起こすことができずに、周りの環境から取り残され、いつの間にか負け組になってしまう。
過去の日本軍だけではなく、現在でも散見されるこの状況。
冷静に分析できたとしても、変革を起こすことは難しいのです。


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失敗の本質


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昭和史の根底には”赤い夕陽の満州”があった 『昭和史 1926-1945』半藤一利著 [よのなか]

半藤一利氏による『昭和史』1926-1945と1945-1989を読みました。

昭和史 1926-1945 (平凡社ライブラリー)

昭和史 1926-1945 (平凡社ライブラリー)

  • 作者: 半藤 一利
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2009/06/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


こういった本を読むときにはまず、著者がどういう立場でどういう考えに沿って発言しているのかを把握することが肝要です。
半藤一利氏は文藝春秋に入社し、その後「週刊文春」「文藝春秋」の編集長を務め、同専務取締役を経て作家になった方です。
文藝春秋に所属していたこともあり保守派といえそうですが、天皇や靖国神社などに対してはリベラルな態度を取っており、どちから一方に偏りがあるというタイプではないようです。
そして、保阪正康氏や司馬遼太郎氏などとも親交が深かったという点も、著者の立ち位置を測る参考になりそうです。

ということで、個人的な考えは当然あるものの、書かれた内容については比較的素直に受け止めてもよいと判断できます。

***

さて、はじめの章にて「昭和史の根底には”赤い夕陽の満州”があった」と題目をつけています。

私も去年の今頃、「なぜ物量に劣る日本が戦争を始めたのか」が不思議で、自分なりに色んな書物を読んで考えました。
その根底を探っていくと、日露戦争に辿りつき、更に遡ると黒船来航に行き着きます。

この『昭和史』においても、ペルリの黒船来航から始まっていることから、「なぜ戦争を始めたのか」を考えると一旦そこまで遡ることになるようです。

1865年から国づくりをはじめて1905年に完成した、その国を40年後の1945年にまた滅ぼしてしまう。
戦後日本を復興させ、世界で1番か2番といわれる経済大国になったはずが、これまたいい気になって泡のような繁栄がはじけとび「なんだこれは」と思ったのがちょうど40年後。
こうやって国づくりを見てくると、つくったのも40年、滅ぼしたのも40年、再び一生懸命つくりなおして40年、そしてまたそれを滅ぼす方へ向かってすでに何十年過ぎたのか

ふーむ、と唸ってしまいます。
失われた10年だ、20年だと言っているにも関わらず、一向に日本全体に明るい兆しが見えないのはまだまだ落ちていく過程だからかもしれません。
このまま財政悪化が進み、今の日本は一度滅びてしまうのでしょうか。。。


***

さて、日露戦争によって、当時世界の五大強国と言われた帝政ロシアに辛うじて勝利し、日本は満州近辺の諸権益を得ました。
この結果、満州はロシアが再度南下してきた時の防衛線-「生命線」-となりました。
さらに資源が乏しい日本の資源供給地として、人口が増加した狭い日本の移民先として重要視されるようになりました。

昭和史の諸条件は常に満州問題と絡んで起こります。そして大小の事件の積み重ねの果てに、国の運命を賭した太平洋戦争があったわけです。とにかくさまざまな要素が複雑に絡んで歴史は進みます。その根底に”赤い夕陽の満州”があったことは確かなのです。

現代日本人からすると、日本本土以外に、満州や朝鮮を領土としていたと言われてもピンときませんが、とにかく多くの血を流して獲得した満州が、戦争へと突き進む軸となったことは確かです。


【関連記事】
なぜ日本は戦争を始めたのか -前編-
なぜ日本は戦争を始めたのか -中編-
なぜ日本は戦争を始めたのか -後編-

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日米関係の再考察 『戦後史の正体』孫崎享著 [よのなか]

戦後日本は高度経済成長を果たし、政治的・経済的自立を成し遂げたように見えますが、アメリカからの影響(圧力)は今でも切っても切れないものがあります。

私が生まれた(1981年)後でも、

・85年のプラザ合意による円高誘導(①結果的にバブルを誘引します ②生産工場の海外移転により雇用が減少します)
・90年代の日米構造協議(①日本に対しGNPの10%を公共事業に配分することを要求し、「公共投資基本計画」により13年間で630兆円を計上し財政悪化を招きます ②大店法の規制緩和により商店街に閑古鳥が鳴きます)
・00年代の金融ビッグバン(外資系金融の参入、ハゲタカの闊歩、グローバルマネーの流入流出)

と続きます。

経済的な事象ばかりなのは、冷戦終結後アメリカは日本の経済力を大きな脅威とみなし、アメリカの対日貿易赤字が膨らむ要因は日本の市場の閉鎖性にあるとして、主に日本の経済構造の改造と市場の開放を迫ったからです。


80年代に日本が「ジャパンアズナンバーワン」と言われ、経済強国として世界に認知されるまでは、アメリカの日本に対する要求は政治的、軍事的なものが中心でした。

***

戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)

戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)

  • 作者: 孫崎 享
  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2012/07/24
  • メディア: 単行本


日本は太平洋戦争でアメリカを始めとする連合国に完敗し、日本政府は「連合国最高司令官からの要求にすべてしたがう」ことを約束し、降伏しました。
そして、1945年9月2日から1952年4月27日までの6年8ヶ月間アメリカに占領されました。

日本から賠償金を取らず、日本を世界第二位(今は三位)の経済国にしたアメリカに、多くの日本人は感謝の念を抱いています。
しかし、それは結果論であって、1945年に訪日した賠償委員長のポーレーは次のような声明を出しています。
①米国の賠償政策は、最小限の日本経済を維持するために必要でないすべてのものを、日本からとりのぞく方針である
②「最小限」という言葉は、日本が侵略した国々の生活水準よりも高くない水準を意味する

また占領時代の6年間で、米軍駐留経費を当時の約5000億円、国家予算の2割から3割を米軍の経費にあてているのです。


しかし、「日本の生活水準を低水準にとどめておく」という政策は1948年に変更されます。
冷戦下のソ連との戦いのなかで、日本を防波堤として使うという考えが出てきたからです。
「ソ連への対抗上、日本の経済力・工業力を利用すること」が米国にとっての国益だと判断したのです。

つづいて朝鮮戦争が起こり、米国は「日本に経済力をつけさせ、その軍事力も利用しよう」と考えるようになりました。
朝鮮特需によって、日本経済は立ち直ることができたのです。
また警察予備隊(後の自衛隊)が組織され、事実上の再軍備がなされました。


その後、講和条約、安全保障条約が結ばれ、日本は政治的、軍事的にもある程度の自立が果たされたかに見えます。
しかし、米国の基本的な考えは「米国が望むだけの軍隊を、望む場所に、望む期間だけ駐留させる権利を確保する」ことであり、それは現在も変わっていません。

***

戦後の日本外交を動かしてきた最大の原動力は、米国から加えられる圧力と、それに対する「自主」路線と「追随路線」のせめぎ合い、相克だったということです。

そこで、「自主」路線を選択した首相は、CIAや米国からの圧力がかかっているマスコミ、検察などによって排斥されてきたようです。

私は日本のなかでもっとも米国の圧力に弱い立場にいるのが首相だと思っています。首相の職責はあらゆる分野にわたっています。もちろんすみずみまで目が届くはずもないので、首相に致命的なダメージをあたえることは実はそうむずかしくないのです。ですから米国はできるだけ、農水省や経産省といった省にではなく、首相の下に諮問機関を作らせ、そこに権限を集中させようとします。そうすれば圧力をかける手間が少なくてすむからです。


こういった陰謀論的な本は、著者による推測や噂などが混じってどれが本当か分らなくなってくるものが多いですが、この本には著者の外交官としての経験やアメリカ側も多く含む数多くの証言などを基にしている為、最大のタブーといわれる「米国からの圧力」を軸とした日本戦後史として一つの明瞭な考察を与えてくれます。


【関連記事】
占領下日本の教訓

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不条理な神と合理的なキリスト教精神の関係 [よのなか]

私が大学の卒業旅行で初めてヨーロッパ(イタリア、フランス、スペイン)に行った時、ものすごい衝撃を受けました。
それは、「ここまでキリスト教がヨーロッパに与えた影響とは大きいのか」ということ。

ルーブル美術館の膨大な芸術作品のほとんどはキリスト教をモチーフにしたもの。
ガウディの代表作、サグラダ・ファミリアは「聖家族に捧げられた大聖堂」。
ミラノやフィレンチェの街の中心にあるのは教会・・・

あらゆる所にキリスト教の影響が行き渡っています。

合理的、論理的をモットーとする西洋文化において、日本人からすれば非合理的に見える特定の宗教を信奉するのは何故なのか。
逆に言えば、キリスト教が拡がる欧米諸国において、合理的精神が敬われたのは何故なのか。

そんな答えを探る為に、『ふしぎなキリスト教』ではキリスト教の基となるユダヤ教の起源から遡って、対談形式で突き詰めていきます。

ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)

ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)

  • 作者: 橋爪 大三郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/05/18
  • メディア: 新書


私はキリスト教系の大学(関西学院大学)に通っていた為、キリスト教の基礎科目は必修だったのですが、全く分ったつもりでいたのが、何も分っていなかったことがこの本を読んで痛感しました。

***

〇キリスト教とユダヤ教はほとんど同じ

・旧約聖書にあたるユダヤ教では預言者が出てくるのに対して、新約聖書にあたるキリスト教ではイエス・キリストが「神の子」として預言者を越えた存在として登場するのが違い
・ユダヤ教もキリスト教もイスラム教も同じ神を崇めている


〇ユダヤ教の律法の果たす役割

・ユダヤ教の律法は、ユダヤ民族の生活のルールをひとつ残らず列挙して、それをヤハウェの命令(神との契約)だとする。日常生活の一切合切が法律
・Godとの契約を守っていれば、国家が消滅しても、また再建できる。そうやって、ユダヤ民族は、自分たちの社会を二千年にわたって保ってきた。イスラエルが建国できたのも、ユダヤ教の戦略の正しさを証明している


〇なぜ全知全能の神が創ったこの世界に悪や貧困がはびこっているのか

・人間の祖先であるアダムとイブがエデンの園という楽園で食べることを禁じられていた樹の実を食べ、楽園を追放されたから
・人間に与えられた「試練」である


〇なぜ神は「神の子」イエス・キリストをこの世に送り込んだのか

・楽園を追われた人類は大部分がダメだったので、ノアの洪水(神の直接行動による処罰)があって、それから契約(モーセの律法)によって人間に規範を与えた。でも、ルール通りにできない罪をどうするかという問題になり、イエス・キリストが現われ、神は律法(契約)を更改することにし、新しいゲームを始めた
・新しいゲームは、律法のゲームではなく、愛のゲーム。愛も律法も、どちらも、神と人間との応答である


〇なぜキリスト教は合理主義なのか

・キリスト教の考え方では、神は世界を創造した。人間も創造した。神にはその設計図があり、意図がある。人間が神を理解しようと思うと、神の設計図や神の意図を理解しなければならない。その可能性を与えるのが、理性
・神が創造したこの世界(宇宙)は、神ではないから、人間の理性で残らず解明できるとも言える。宇宙に理性を適用したら、神の意図や設計図が読解できないか。これも信仰に生きる道である。こうして、自然科学を始める体制が整った
・救済予定説は、救済が人間の行動に左右されないという説なので、これを信じる人々は勤勉になりそうない。しかし、自分は神の恩恵を受けていることことを証明したいから、勤勉に働くようになり、資本主義の発展につながった

***

日本は戦後、米国の占領下に置かれ、米国の影響を多大に受けたこともあり、かなり欧米諸国の考え方に染まっています。
しかし、欧米諸国の考え方の源泉にある、キリスト教の理解は全く進んでいません。
その点、この本は根源的な質問に一方が丁寧に答えるというスタイルで、キリスト教理解の一助となるものとなっております。

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