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官僚制の成り立ちと勃興 [よのなか]

融通の無さの代名詞として使われる「官僚」。
日本におけるその成り立ちをちょっと振り返ってみました。


近代日本の官僚制は明治時代の始まりと共に成立しました。

当時の日本の性質として、後発国としての高度成長の養成から中央集権制度の確立が求められ、それを安定的かつ集権的に行う重要な主体の一つが官僚でした。

司馬 遼太郎 『翔ぶが如く』にみる官主導の原点

山本七平氏の『派閥の研究』の中で、その点に言及しています。
「明治の初めのうちは、藩閥という横のシステムが機能していて、伊藤博文の子分は大蔵省にいれば商工省にもいる、陸軍省にも外務省にもいるということになっていましたから、伊藤博文が『ちょっと来い』といえば色んな省から人間が集まってきた。したがって、縦の原理と横の原理のバランスがあったと思うんですね。ところが、高文制が明治26年から始まって2,30年たちますと、選抜制でやってますから、藩閥がなくなってくる。・・・藩閥色が急速に薄れて、そして各省縦割りになって横の原理がなくなってくるわけですね。藩閥についで現われた横の原理が政党政治であって、これが藩閥をリプレースして『おれが横の原理である』と叫んだわけですけれども、不幸にして日本の政治政党は失敗してしまいました。」


「派閥」の研究 (文春文庫)

「派閥」の研究 (文春文庫)

  • 作者: 山本 七平
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1989/09
  • メディア: 文庫



藩閥に対抗して出てきた自由民権運動、それを基にしてできた自由党は、一種の「対抗藩閥」という形にならざるを得ませんでした。
この派閥的政党政治は失敗し、次に軍閥が登場します。
軍という官僚組織が日露日清戦争後から満州事変と経て、官僚の中でも台頭し始め政策形成に強い影響を持つようになり、第二次大戦に突入します。



そして第二次大戦後、広い権限を持った内務省解体など戦前の官僚機構は解体され、戦犯や思想による公職追放などは行われました。

戦勝国であり占領国であったアメリカは社会主義陣営との冷戦の激化において、復興のための政策形成を行う主体として、保守政党と官僚にそれを求め、傾斜生産方式など中央集権的な政策形成を行いました。
このように戦前は後発国、戦後は戦災国として高度成長を外的内的な要因から要求され中央集権的に政策形成を行ったのが官僚でした。

戦後の日本は、憲法から、教育制度、農地解放、税制改革≪シャウプ税制≫に至るまで、いわば、アメリカが次々に押しつけた服に身体をあわせ、見事に着こなしてきた。そのしたたかさ、柔軟性にかけては日本人は見事で逞しい。
だが、アメリカと日本との関係が大きく変わり、服を推し付ける、それを着こなすというかたちではなく、自前で自分の服をつくらざるを得なくなった。
自前で土台作りから、未来ビジョン策定までしなければならなくなった。
また、国際経済摩擦の激化から、農水、通産、郵政、大蔵など、それぞれの官庁の利害が相反して、これまでのように”省あって国なし”の縦割行政では二進も三進も行かなくなって来た。
戦後、占領軍の押付けを、日本流…日本官僚の”運用”=したたかな柔軟性で処理し、逆に飛躍のバネとして来たのが、随所で矛盾、軋みを生じはじめたのだ。   田原 総一朗 『平成・日本の官僚』より


最近では、官僚制の逆機能が目立ってきています。

官僚制の逆機能とは、

•組織全体よりも自分自身の所属する利益が優先されて全体の利益につながらない
•組織の力と自分の力を混同し,外部に対して威圧的な行動をとる
•規則や命令をかたくなに重視すると、それさえ守りすればよいということで、内部では形式主義、事なかれ主義になる

本来は合理的な管理・支配の制度として生み出された官僚制が、様々なマイナスの効果(逆機能)が出てくるというものです。


これは官僚制だけでなく、どんな組織にも言えることです。
設立から長くなればなるほど、大きくなればなるほど、組織は「官僚的」になっていきます。

ただ、大蔵省のノーパンしゃぶしゃぶ以降、官僚は叩かれ過ぎな気がしますけどね~。


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don

こんばんは~
ハイピッチで渋い本を読まれてますね^^

「空気の研究」を読もうと思いながら、図書館購入の
新刊に埋もれてます。

基本的に新刊派なんですが、はずれが続いたので、
時間を浪費しています^^;
by don (2013-03-25 22:14) 

mino

donさん、こんばんは〜

「空気の研究」は名作として、よく他の書物でも紹介されていますよね。私も以前読みました。
http://simple-nero.blog.so-net.ne.jp/2012-01-11

私も新刊がいいのですが、基礎固めの為に過去のものも芋づる式に読んでいます。
山本七平賞受賞作はいずれ一通り読んでみようかと考えています^_^;
by mino (2013-03-26 15:04) 

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