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「右翼」とは?「左翼」とは? [よのなか]

現代では「左翼」「右翼」がよく分からなくなってきています。
戦争もしくは戦前の記憶が遠ざかっていること、55年体制、冷戦構造が崩壊したことが理由です。

そうした「左翼」「右翼」って何ですか?という若者に向けて書かれた『右翼と左翼』は非常に興味深い内容となっています。

右翼と左翼 (幻冬舎新書)

右翼と左翼 (幻冬舎新書)

  • 作者: 浅羽 通明
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2006/11
  • メディア: 新書


「右翼」と「左翼」の語源がフランス革命当時、国民議会で保守派と急進派のそれぞれ右方と左方の席を占めたことからきていることはトリビア的知識として有名です。

しかし、本来的な意味を考えるとき、「右翼」「左翼」の誕生は人類史から見ても重要です。

それまで、絶対王政や貴族や僧侶など特権階級に権力が集中していたものが、徐々に平民(当時はまだブルジョア階級)の声を無視できなくなっていったのです。
フランス革命時、王の権限を守ろうとしたのが右翼に位置した保守派、絶対王政批判をしたのが左翼に位置した急進派だったのです。

フランス革命は王党派の盛り返しや急進派の分裂はありましたが、イギリスやアメリカ、欧州諸国、そして日本にまで民主化(普通選挙)の波が拡がりました。


絶対王政批判から、立憲主義=自由主義へ。さらに進んで民主主義へ。そのまた先まで進み社会的民主主義へ。そして、さらにはるか彼方に社会主義、共産主義を目指す。このように、それまで先進的で主流だった立場を、次々と古いものと化しつつ進展してゆくのが、「左」だったのです。

つまり、「歴史が進歩している」「その進歩とは『自由』『平等』の実現をいう」とする考え方を前提に、その「進歩」をより先取りしようとする立場が「左」「左翼」で、「伝統」を守り「進歩」を押しとどめようとする立場が「右」「右翼」なのです。
こうした「伝統」的な世の中の仕組みには、近代以前に起源を有する王制、天皇制、身分制などが含まれ、それらは大方、「階層的秩序」「絶対的権威」を含んでいます。


明治政府は、徳川幕府体制を廃して、新しく近代的統一国家を形成するにあたって、求心的なシンボルとして有効な天皇や国粋的なイメージ(「右」)も欧米の近代文化(「左」)も、ともに必要としたのです。
昭和の「右翼」は、明治の権力者が作り上げた天皇を崇拝し浄化させ、戦争へ突入していきました。

戦後、主に占領軍によって起草された日本国憲法は、象徴天皇制と議員内閣制を明文で規定し、戦前の権力内「右」は、反体制の「右翼」へ押し出されました。
その後、米ソ冷戦の始まりによって、占領軍の日本統治と改革方針は大きく転換され、逆コースの到来となりました。
日本は西側諸国、アメリカ資本主義の最前線で、アメリカの傘の下「左」も「右」も巻き込んで経済活動に邁進していったのです。

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