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昭和史の根底には”赤い夕陽の満州”があった 『昭和史 1926-1945』半藤一利著 [よのなか]

半藤一利氏による『昭和史』1926-1945と1945-1989を読みました。

昭和史 1926-1945 (平凡社ライブラリー)

昭和史 1926-1945 (平凡社ライブラリー)

  • 作者: 半藤 一利
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2009/06/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


こういった本を読むときにはまず、著者がどういう立場でどういう考えに沿って発言しているのかを把握することが肝要です。
半藤一利氏は文藝春秋に入社し、その後「週刊文春」「文藝春秋」の編集長を務め、同専務取締役を経て作家になった方です。
文藝春秋に所属していたこともあり保守派といえそうですが、天皇や靖国神社などに対してはリベラルな態度を取っており、どちから一方に偏りがあるというタイプではないようです。
そして、保阪正康氏や司馬遼太郎氏などとも親交が深かったという点も、著者の立ち位置を測る参考になりそうです。

ということで、個人的な考えは当然あるものの、書かれた内容については比較的素直に受け止めてもよいと判断できます。

***

さて、はじめの章にて「昭和史の根底には”赤い夕陽の満州”があった」と題目をつけています。

私も去年の今頃、「なぜ物量に劣る日本が戦争を始めたのか」が不思議で、自分なりに色んな書物を読んで考えました。
その根底を探っていくと、日露戦争に辿りつき、更に遡ると黒船来航に行き着きます。

この『昭和史』においても、ペルリの黒船来航から始まっていることから、「なぜ戦争を始めたのか」を考えると一旦そこまで遡ることになるようです。

1865年から国づくりをはじめて1905年に完成した、その国を40年後の1945年にまた滅ぼしてしまう。
戦後日本を復興させ、世界で1番か2番といわれる経済大国になったはずが、これまたいい気になって泡のような繁栄がはじけとび「なんだこれは」と思ったのがちょうど40年後。
こうやって国づくりを見てくると、つくったのも40年、滅ぼしたのも40年、再び一生懸命つくりなおして40年、そしてまたそれを滅ぼす方へ向かってすでに何十年過ぎたのか

ふーむ、と唸ってしまいます。
失われた10年だ、20年だと言っているにも関わらず、一向に日本全体に明るい兆しが見えないのはまだまだ落ちていく過程だからかもしれません。
このまま財政悪化が進み、今の日本は一度滅びてしまうのでしょうか。。。


***

さて、日露戦争によって、当時世界の五大強国と言われた帝政ロシアに辛うじて勝利し、日本は満州近辺の諸権益を得ました。
この結果、満州はロシアが再度南下してきた時の防衛線-「生命線」-となりました。
さらに資源が乏しい日本の資源供給地として、人口が増加した狭い日本の移民先として重要視されるようになりました。

昭和史の諸条件は常に満州問題と絡んで起こります。そして大小の事件の積み重ねの果てに、国の運命を賭した太平洋戦争があったわけです。とにかくさまざまな要素が複雑に絡んで歴史は進みます。その根底に”赤い夕陽の満州”があったことは確かなのです。

現代日本人からすると、日本本土以外に、満州や朝鮮を領土としていたと言われてもピンときませんが、とにかく多くの血を流して獲得した満州が、戦争へと突き進む軸となったことは確かです。


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なぜ日本は戦争を始めたのか -中編-
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