SSブログ

『外資系金融の終わり』 藤沢 数希著 [本]


外資系金融の終わり―年収5000万円トレーダーの悩ましき日々

外資系金融の終わり―年収5000万円トレーダーの悩ましき日々

  • 作者: 藤沢 数希
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2012/09/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


よのなか度:★★★★

この本は面白い。

頭のいい人が本質を理解して、平易な言葉で-池上彰みたいに-説明してくれるのが何事も一番腹落ちしますが、この本も外資系金融に関してその類いです。

例えば、最近の金融市場で繰り広げられるマネーゲームをドラゴンボールに喩えています。

ドラコンボールでは、初め戦闘力数百程度での戦いでしたが、フリーザが出てきた辺りから数十万から数億へと戦闘力は一気にインフレします。
マネーゲームも同じで、10年前にノーベル経済学者とソロモンのスタートレーダーであるジョン・メリウェザーが率いたヘッジファンドLTCMは金融危機を招きかけ、最終的に4000億円の損失を出しましたが、2008年の金融危機ではシティグループが3兆円、AIGは10兆円もの損失を出しました。
破綻したリーマンブラザーズは人類史上最大の64兆円の負債総額でした。
ちなみに2008年にソシエテジェネラルの平トレーダーが隠しアカウントで8000億円をすり、2011年にはUBSで同じく個人が隠れてトレードして2000億円ほどぶっ飛ばしてくれました。


これ程までにリスクリターンが大きくなったのは、投資銀行や証券会社が自己勘定取引、つまり顧客からの依頼を受けて債権の売買を行うのではなく、自己の資本や借り入れを使い更にレバレッジをかけて大きな博打を打つようになったからです。

そこには、トレーダーの収入は儲ければ儲けた分の5~10%を報酬に取り、失敗しても最悪クビだけという、まるでコールオプションのような報酬体系によりモラルハザードがおき、トレーダーは益々大きなリスクをとるというインセンティブが働いたのです。
ジョン・ポールソンは自らが率いる小さなヘッジファンドでCDSを使って住宅ローン担保証券を空売りし1兆6000億円稼ぎ、自分のポケットに4000億円入りました。
一方、ドイツ銀行のトレーダーだったグレッグ・リップマンも負けじと数千億円稼ぎましたが、銀行のサラリーマンだった為、「たった」50億円しか稼げませんでした。


このように多大なレバレッジをかけて世界の金融マーケットで博打をうつ金融コングロマリットは、失敗しても「大きすぎて潰せない」ため、政府からの公的資金が入るという暗黙の政府保証がついています。
世界の大手金融機関は、儲けた時は多額の報酬を受け取り、つぶれそうになると政府に救済されるという、モラルハザードの温床になっているのです。

著者自身は、情報のファイアーウォール問題も含めて、金融コングロマリットは解体し、それぞれが専門のマーケットで自己責任で活躍するべきだと説いています。


【関連記事】
『獅子のごとく』
『トリプルA』
『欧州債務危機を招いたゴールドマン・サックス』
 

nice!(5)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:資格・学び

nice! 5

コメント 2

don

お、これまた早いですね。
読もうリストに入れてる本です^^
by don (2012-10-06 14:54) 

mino

私はかなりドメスティックですが、金融機関に勤めているので興味深く読みました。
藤沢 数希さんの他の本にも当ってみようと思っています^^
by mino (2012-10-08 23:05) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。