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『ルポ 終わらない戦争―イラク戦争後の中東』 別府 正一郎 [本]


ルポ 終わらない戦争――イラク戦争後の中東

ルポ 終わらない戦争――イラク戦争後の中東

  • 作者: 別府 正一郎
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2014/03/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


★★★

国連安保理の決議による承認を得ないまま、2003年にアメリカの武力侵攻によって開戦したイラク戦争は、開戦の大義である大量破壊兵器を見つけられなかったという点でアメリカにとって失敗でした。
しかし、その後フセインという重石を失ったイラクで、宗教派閥間の対立からイラク国民同士の内戦に、そして中東全体の混乱につながる「パンドラの箱」を開けてしまったという点で、国際的に大失敗だったのです。

イラク戦争による民間人の数を記録し続けてきたイギリスの民間団体「イラク・ボディー・アカウント」が発表したところによると、開戦後の10年で犠牲になった民間人はおよそ12万人。アメリカ軍やイラクの治安組織のメンバーも含めると、あわせて17万人が死亡した。
混乱はイラク国内にとどまらなかった。中東の心臓部に位置するイラクは、サウジアラビアやイラン、それにシリアやトルコなど六つの国と国境を接する。イラクの混乱は国境を越え、隣国や周辺国、さらには、アフリカにも及んだ。

イラク戦争が開けてしまった対立と分断の「パンドラの箱」は、閉じられることがないまま、いまも中東全域に衝撃波が広がり続けています。

日本は、遠い中東の、馴染みの薄いイスラム教徒の国の問題だと無関心で良い訳ではありません。
ペルシャ湾岸の産油国から、日本はほとんどの原油を輸入しており、ペルシャ湾は日本が輸入する原油のおよそ8割のタンカーが通過する、日本のエネルギー安全保障のかなめでもあり、生命線だからです。
これまで大筋で利害を共にしていたアメリカが、自国のシェール革命により中東への関心が薄まれば、今後中東の情勢は更に混沌とすることも予想されます。

そんな中でも、イラクの石油をめぐる進出競争は激しさを増しています。
イラクでは1980年のイラン・イラク戦争からの相次ぐ戦争の為に、手付かずの油田が多く、「最後のフロンティア」とも呼ばれ、日本の大手商社などの関心も高いようです。


本書はNHKの特集を中心とした構成になっている為、時系列や地理軸がバラバラで中東情勢に疎い人には分かりにくいです。
ただ、紛争下の緊張状態で取材してきた筆者による、生々しい現場を感じることができます。





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