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隠れたベストセラー『日本人の英語』 マーク・ピーターセン [本]

世の中には、「隠れた」ベストセラーが存在するものです。
例えば、この絵本。


だるまさんが

だるまさんが

  • 作者: かがくい ひろし
  • 出版社/メーカー: ブロンズ新社
  • 発売日: 2007/12
  • メディア: 単行本


たまたま図書館で手に取り、2歳になる息子に見せたら、大爆笑。
先週この絵本を本屋で見つけたら、100万部突破してました。

すごい!
よっぽど子供のツボを突いて、1~3歳ぐらいの子供という狭いターゲットながら、「バカ受け」したんですね。


さて、英語学習者の隠れたベストセラーといえば、コチラ。

日本人の英語 (岩波新書)

日本人の英語 (岩波新書)

  • 作者: マーク・ピーターセン
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1988/04/20
  • メディア: 新書


★★★★

私は時々業務で英文メールを書いているのですが、いつも迷うのが冠詞(a,an,the)と前置詞(on,in,atなど)の使い方。
この本では、日本人が一番間違いやすいその点を中心に、日本語にも精通しているネイティブスピーカーが解説してくれます。

例えば、「名詞にaをつけるかつけないか」でよく迷いますが、実際ネイティブスピーカーの思考プロセスでは「aに名詞をつける」のです。

具体的には、食べた物を伝えたい時に、一つの形の決まった、単位性を持つものならば、
"I ate a...a...a hamburger!”
になりますが、もし食べた物として伝えたいものが単位性もない、何の決まった形もない、材料的な物ならば、
"I ate...uh...uh...meat!"
になるのです。

これは「目からウロコ」の例文でした。
単語に飾りとして"a"がつくのではなく、「a+名詞」は意図的な意味を持つのです。

他に、"The idea is ..."など、いきなり"The"で始まる文章は、読み手はいらいらして"What!?!"と聞かずにいられない、というのも「ああ、やっぱりそうなのかー」と納得。

あと、アメリカに行っている間に英語を勉強し直していたのですが、改めて困ったのが時間に使う前置詞。
月の場合、in Julyとかinを使うのに、日が入ってくるとはon July 4thとonを使う。
午前を表す場合も、in the morningだけど、日が入ってくるとon the morning of July 4thとなる。

なので、「日が入ってくるとonを使う」と、なんとなく覚えたのですが、これも英語の論理的感覚があるようです。
inは三次元的で「中」にという感覚ですが、onは二次元で「上」にという感覚が、時間にも反映しているのです。

上の例で言うと、in Julyやin the morningは「間」を表しているのに対し、on July 4thやon the morning of July 4thは「時点」を表しているのです。

こういったネイティブが持つ英語の論理的感覚を、日本語でユーモアを交えて解説してくれるので、受験英語の丸覚えから脱却するきっかけとなります。
受験生を含む、英語学習者には必読の書ですね。

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『国際メディア情報戦』 高木 徹 [本]


国際メディア情報戦 (講談社現代新書)

国際メディア情報戦 (講談社現代新書)

  • 作者: 高木 徹
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/01/17
  • メディア: 新書


★★★★

著者が2002年に出版した『戦争広告代理店』は、当時社会学部でメディア論を専攻していた私にとって、非常に面白く、卒論にも大いに参考にしました。
その時は著者の肩書きを特段気にせず、ジャーナリストだと思っていたら、NHKのディレクターだったんですね。

『沸騰都市』や数多くの大型ドキュメンタリーを手がけています。
その著者が、ディレクター目線で、国際的なメガメディアに登場する情報の真の意図を探ります。

例えば、ビンラディン殺害の際に公開されたこの写真。
110501ObamaSituationRoom.jpg

オバマ大統領を始め、アメリカ政府閣僚が固唾を呑んで、ビンラディン殺害作戦現場から送られる生中継映像を「シチュエーションルーム」で見つめる様子からは、緊迫した雰囲気が伝わってきます。
問題はなぜ、この写真が選ばれ、公表されたのか。

ビンラディン殺害はアメリカ政府にとってもリスクのあることで、極限の緊張感を国民と共有し共感を得ることで、他国に乗り込んで要人を暗殺するという明らかな国際法違反を正当化しようとしたのです。
このように、何気なくメディアに登場する情報も、何かの意図が隠されていると筆者は主張します。

そこには、『戦争広告代理店』で描かれたように、ボスニア紛争におけるミロシェビッチ大統領を極悪人として仕立て上げるようメディアをコントロールした、全米5位の大手PR会社ルーダー・フィン社のジム・ハーフのようなPRのプロがアドバイスしていると、数多くの取材から確信しています。
番組や報道にメッセージを「埋め込む」ことができれば、金で買われたことが明白な広告と違い、色眼鏡を通さずに情報を消費者の心に送りこむことができるのです。

21世紀初頭のメディアスター、オバマ大統領とビンラディンを中心とした事例を取り上げるこの本は、大手PR企業が様々なテクニックを駆使して埋め込んでくる、国際情報の真意や意図を読み解くヒントになるでしょう。
『戦争広告代理店』もお薦めです。


ドキュメント 戦争広告代理店―情報操作とボスニア紛争

ドキュメント 戦争広告代理店―情報操作とボスニア紛争

  • 作者: 高木 徹
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2002/06
  • メディア: 単行本


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『格付けしあう女たち』 白河桃子 [本]


(010)格付けしあう女たち (ポプラ新書)

(010)格付けしあう女たち (ポプラ新書)

  • 作者: 白河桃子
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2013/11/06
  • メディア: 新書


★★

テレビで「志村動物園」をなんとなく観ていたら、寒い地方のサル山の映像が流れていて、100匹程のサルが寒さを逃れる為におしくらまんじゅうをしていました。
ギューと集まって、秩序が無さそうなそんな状態でも1~100番まで序列が決まっているそうです。
ボスは一番真ん中の方でヌクヌクしているのですが、下っ端は端っこの方で寒さに震えていました。

これで気付きました。
人が他人と自分を見比べて、優劣つけたがるのは、お猿さん時代からの本能なんだ、と。

男であれば、年齢、地位、収入で大体優劣が決まります。
一方、女性の場合はもっと複雑です。

上記の他に、「女としての幸せ」が入ってくるからだと、この本は指摘しています。

日本の近代では、女としての幸せの多くは、自分ではなく、夫や子供によって決まっていました。
そこで、近所の旦那とすぐ比較したがる夫に厳しい鬼嫁や、子供を一流大学に入れるのに必死な教育ママというのが出来てくるんですね笑

専業主婦であれば、女性は狭くて均質的な社会を生きざるを得なくなります。
そうすると、更に細かい差異によって、他人と優劣をつけたくなってしまう。

視野を広げれば、そんな比較はバカらしいことに気付きます。
アメリカに行った際、隣のマンションより部屋が10㎡広い狭いというのは、アメリカの住居と比べるとどちらにしても狭いのは一緒で、どんぐりの背比べだなーと感じましたし、後進国と比べれば、毎日お腹一杯食べて家族と安全に暮らせていることはこの上ない幸せです。

日本でも社会が多様化してきて、女性の社会進出は当たり前ですし、幸せの在り方も様々になってきました。
「人と比べるのはやめて、目の前の幸せを大切にしよう」という風潮も、経済格差が進めば進む程出てきた気がします。

それでも、初対面の人と会っては序列の探り合いをし、Facebookを見ては自分のプライベートと比べ、何事につけ人と優劣をつけたがることは人はやめないでしょう。
それは、人類が成長したエンジン(猿人)だからです。

うまっ!くもないか。。。
男目線ではあまり共感しづらい本でしたが、女性が読むと違うのかな。

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天賦の才能を『覆す力』 森内 俊之 [本]


覆す力 (小学館新書)

覆す力 (小学館新書)

  • 作者: 森内 俊之
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2014/02/03
  • メディア: 単行本


★★★

現在、将棋界最高峰のタイトルである名人と竜王の両方を有している森内さん。
永世名人でもある森内さんは、羽生さん、渡辺さんと並び、現在の将棋界を牽引するスーパースター。

しかし、本書を読んでみると意外な感じがします。
「名人に相応しくないかもしれない」「このまま一生無冠で終わるかもしれない」「羽生さんとの間には大きな差がある」という、謙虚というか、弱々しい言葉が目につきます。

しかし、それらのほとんどが、絶対的な存在である、羽生さんを意識してのもの。
同期でもある羽生さんが、史上初の7冠を始め、若い内からあまりにも優れた成績を残していたので、どうしても比較してしまいました。

オールラウンダーで天才肌の羽生さんに嫉妬や劣等感、焦りを感じたこともあったそうです。
一方で、その羽生さんの存在は、自らを高めてくれる、欠かせないものであったと言います。

自分は(羽生さんのように)決して天才ではないという森内さんは、「プロとして大成するには、才能と努力のどちらが大切か」という質問に対してこう答えます。

「私の経験で考えてみると、自分の特性を知り、受け入れることができたときに何かが動き始めたような気がする。
持って生まれた才能は変えることができないし、また、やみくもな努力も効率が悪い。自分の特徴に気づき、適切な努力をすることこそが、これまでの自分を変えるための最良の方法なのではないだろうか。」

森内さんの場合、得意の受けと熟考、この二つを基礎とし、改良を加えていくことで、良い成績を残せるようになります。

自分の得意分野に気付き、伸ばすこと。
これこそが絶対的才能を有する人を覆すのに必要な力であったと、結果を残した今、確信されているのです。
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人々の心に巣食う『国家のシロアリ』 福場 ひとみ [本]


国家のシロアリ: 復興予算流用の真相

国家のシロアリ: 復興予算流用の真相

  • 作者: 福場 ひとみ
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2013/12/12
  • メディア: 単行本


★★★★

国家のシロアリ。
痛烈なタイトルですが、本書の基になった週刊ポストのレポート記事は、「19兆円復興予算をネコババした泥棒シロアリ役人の悪行」というタイトルで、更に過激で煽り口調のものでした。

復興予算流用のハナシ。

筆者がネット上で公開されている予算書から、流用を疑い、その後の取材を基にまとめたレポートが週刊誌に掲載されてから、政治問題に発展していく前半部分は、筆者の功績が自慢されているようでいささか退屈です。
しかし、後半になるにつれ、問題の核心を突いていきます。

なぜ、流用問題は見過ごされたのか。
何者かが意図したものなのか。

流用疑惑を取材するに当たって、流用の正当性を主張する根拠として霞が関の担当者がこぞって挙げた「2011年7月29日に策定された復興基本方針」。
この「復興基本方針」は、それに先駆けて行われた有識者会議の「復興構想会議」の結論を反映したもので、その有識者会議にこそ、真実が存在しました。

こうした諮問会議は通常、事務方である官僚があらかじめ持っていきたい方向に、政府委員が御墨付きを与える場として機能することが多く、今回も例外ではありませんでした。
様々な有識者の提言によって議論が拡散する中、終了時間が迫った間際になって、予め官僚が用意しておいたまとめの文章で「増税」や「復興予算を被災地に限らず活用」することが盛り込まれ、既成事実となりました。

そこには官僚だけでなく、一般予算でシーリングを強いた一方、補正予算、特別会計で復興予算を一般事業にも活用したい官邸や、当時の野党であった自民党の思惑が働いていました。
更にメディアも、「復旧」ではなく「復興」を、全国的な防災を、と繰り返し訴えて乗っかります。

僕個人も震災当初は熱心に募金したりして、何とか被災地、被災者の力になりたいと思っていました。
しかし、時間が経つに連れ、当初の記憶が薄れていき、被災地の為に何かしなければという想いも日々薄れていきました。

そして、増税という形で全国の納税者から被災地に資金がいくのであれば、あとは国がなんとかしてくれるであろうと、その使い途には無関心でした。
ましてや、そのお金が流用されたと聞いても「ああ、いつものことだな」と感じる程度。

民主党から自民党政権に揺り戻しがおき、「国土強靭化」のキーワードがニュースや新聞を騒がしても、いつもの看板の付け替えで、また公共工事のバラマキが起こるのかと諦め半分、僕が勤める会社も間接的に恩恵がありそうという期待半分でした。
そうして本来考えるべき被災地における被災者の生活は、遠ざけられ、忘れられていきます。

この本では、そうした人々の無関心こそが、国家のシロアリを生む最大の要因かもしれない、と指摘しています。
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鉄の男 『イーロン・マスクの野望 未来を変える天才経営者』 竹内一正 [本]


イーロン・マスクの野望 未来を変える天才経営者

イーロン・マスクの野望 未来を変える天才経営者

  • 作者: 竹内一正
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2013/12/06
  • メディア: 単行本


★★★

アップルのスティーブ・ジョブズも、アマゾンのジェフ・ベゾスも超えた男。
それがイーロン・マスク。

ハリウッド映画のスーパースターみたいな触れ込みです。
実際、映画『アイアンマン』の主人公のモデルにもなっています。

17歳で南アメリカからカナダ、そしてアメリカに移住してきて、IT企業「Zip2」を設立。
その会社を売却した資金を基に、インターネット決済サービス会社「Xドットコム」を設立し、それも売却。
31歳にして、170億円を手にしました。

通常の人間ならここで、IT長者として悠々自適に余生を送るはずです。
しかし、彼は違いました。

更にそのお金を基に、宇宙ロケット会社「スペースX社」を設立したのです。
理由は、人口が増大し地球環境が悪化する中、人類の将来は火星移住にあると考えたから。

しかも、火星移住が実現するまでの間、悪化する地球環境を食い止めようと、電気自動車の「テスラ・モーターズ社」、太陽光発電の「ソーラーシティー社」に出資し、それぞれ会長に就任。

もうスケールがデカすぎて、映画の話みたいです。
しかし、その道は平坦ではありません。

従来のコストの10分の1を目指して打ち上げたロケットは3度失敗。
ほぼ同時期にテスラモーターズ社で販売を予定していた電気自動車のスポーツカー、「ロードスター」 は販売を数度延期。
家庭は離婚。

これだけで心が折れそうになりますが、苦しい資金繰りも自らを担保に乗り越えます。

最終的に、ロケット事業はNASAからISSへの運搬事業を受託。
テスラ・モーターズは「モデルS」の量産化に成功し、併せて全国に太陽光発電を設置した急速充電器スタンドを設置。

イーロン・マスクが凄いのは、軍需産業、石油業界、自動車業界と、アメリカの政治経済に多大な影響を及ぼしている既存の業界に、ことごとくケンカを売っている点です。
正しく鉄の男です。


アイアンマン [Blu-ray]

アイアンマン [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • メディア: Blu-ray



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結局ボンボンの甘ちゃん「熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録」 井川意高 [本]


熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録

熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録

  • 作者: 井川 意高
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2013/11/13
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


お薦め度:★★

先日懇意にしている社長の所に伺った際、金遣いになり、その社長はこう言いました。
「どうせなら、どーんとお金を使った人に話を聞いてみたいね。例えば、グループ会社の100億をバクチに使った大王製紙の三代目みたいに・・・」

確かに年末ジャンボ宝くじを買って、1億当たったらどうしようとか、いらぬ心配と期待をしながら年を越す私のような庶民には、100億の金を使い込むなんて、金額が大き過ぎて想像すらできません。

丁か半か。
吉か凶か。

そのとき私の目の前には、サラリーマンの平均生涯賃金のおよそ10人分にあたるチップが山積みされていた。総額20億円。

「まだまだだ。もっとだ。もっと勝てるに決まっている」
総額20億円はただの通過点であって、目標地点であろうはずがない。20億円を基点とし、私はさらなる頂の高みを見据えていた。

いつ終わるとも知れぬバカラの攻防戦に没入する私は、現生にポッカリ口を開けた無間地獄への入り口に、我が半身を突っこみかけていたのかもしれない。

冒頭が本格ギャンブラー小説を思わせる入り方で、ティッシュの「エリエール」、子供用オムツの「グーン」で知られる有名企業の経営者による100億の大勝負を期待させるのですが、その後はガックリするような内容です。

この本には大王製紙一族の三代目「井川意高の懺悔録」という副題がついています。
しかし、本人の弁からは本当に反省しているようには聞こえません。

「使ったのはグループの運転資金ではなく、余裕資金」
「一方的に命令するような指示を出していたわけではない」
「借金については大王製紙の経理担当者や監査法人のトーマツの目にも留まっていた」
「裁判はポーカーフェイスと直立不動で臨んだ」

その上、「一審の判決がでるまでに借金は全て返した」「時期がきたら返すつもりだった」と書かれていますが、最終的に井川家が持っていた大王製紙の株を売却して借金を返済しているので、自ら経営者を務める会社の、実質流動性のない株式で、どうやって借金を返すつもりだったんでしょうか。
それができないから、作ってしまった借金を、冒頭の描写のようにギャンブルで返そうとして、更なる深みに入ってしまったのです。

仕事はできた、とありますが、経営者としてあるまじき行為ですね。

他にも、
東大にはそれ程苦労せず入った、
大学の頃から銀座や祇園で名だたる経営者達との交遊、
芸能人の知り合いが多数いる、、、
などを「懺悔録」で嬉しそうに語ってしまうその姿は、やっぱりボンボンの甘ちゃんだなぁという気がします。
羨ましい限りですが。
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20年前から変わらない「日本の論点」 大前 研一 [本]


日本の論点

日本の論点

  • 作者: 大前 研一
  • 出版社/メーカー: プレジデント社
  • 発売日: 2013/10/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


★★★

先日の東京都知事選。
東京都民の僕は、大前研一さんが出馬していたら、迷いなく大前さんに入れていました。

Chikirinさんの、今回の都知事選で「あなたが立候補してほしい人は誰ですか?」というアンケートでも、トップになっていました。
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20140119
ただ、一度大前さんは都知事選で失敗して以来、裏方に徹して改革に向けた政策を立案することに専念しています。

その大前さんが書いた「日本の論点」。
言っていることは20年以上も前から変わっていません。
道州制しかり、資産税しかり。

同じことを繰り返し言って印税を稼いでいるという穿った見方もできますが、逆を言えば、この20年来、日本は何一つ変わっていないことになります。
その間、世界は大きく変わっているというのに、、、です。

大前さんの考え方の根本は、規制緩和、自由貿易による新自由主義です。
強者が稼ぐことによって国家は繁栄し、結果的に弱者も救われるというもの。

可能性のある若者や能力のある強者にとっては耳障りが良くても、実際数多くいる弱者にとっては、共感できないことも多いでしょう。
それでも、シンプルな物言いに、ハッと本質を気付かされます。

【マクロ経済理論】
「ケインズ政策が機能しなくなった理由は、経済がボーダレス化し、国境を越えて生み出された人、カネ、モノ、情報が移動してしまうから。」

【台湾企業の強さ】
「事業部制を取っているところではいまだに各事業部がヒット商品を狙って汗を流している。自分たちの商品がスマホのアイコンになるイメージが持てないから、どうしてもモノを作ろうとする。ゆえにこの5年で日本のエレクトロニクス産業は突然死寸前まで追い込まれてしまったのだ。」
「中国語、英語、日本語の三ヶ国語を操る台湾勢は世界のマーケットに通じているし、日本の事情も知り抜いている。中国人の使い方も知っている。」
「主役はアップルやグーグルであり、それを取り囲むサポート部隊のほとんどが台湾勢。そして台湾勢の指示通りに動いているのが中国企業―というのが世界のエレクトロニクス業界の構図である。」

【地方分権】
「田中角栄的手法がゆきすぎて利益誘導型の政治が蔓延し、地方の役人たちは中央から「権限」よりも、「お金」をもってくる陳情ばかりに勤しむようになったのも事実だ。」

【外交】
「戦後60年間、整理整頓せず、目録も作らずに溜め込まれた自民党外交のパンドラの箱を民主党政権が開けた途端、魑魅魍魎の外交問題が飛び出してきた。どれもこれも解決不能になっている理由は、外交交渉がすべて腹芸と裏ワザで行われてきたからだ。」

【原発】
「再稼働すべきかどうかの判断は「どんな事態になっても冷温停止し、その状態が維持できるように、電源と冷却源の多重性と多様性が確保されているかどうかを、一つ一つの原発でチェックして個別に判断されるべきものか」なのだ。コンピュータ・シミュレーションによるストレステストでは、安全性は決して保証されない。」

【宗教】
「そもそもキリスト教であれ、イスラム教であれ、神の教えという原始的な部分ではわざわざ宗教対立を煽るような教義はない。対立の本質は教義の対立ではなく、人間の対立、つまりパワーゲームなのだ。カトリックとプロテスタントの対立にしても聖書を解釈する人間の対立であり、政治問題となったアイルランドの凄惨な宗教対立もその本質は先住者と入植者の戦いである。」

大前さんの日本の論点が変わる日が来るのでしょうか。
おしまい、またねー。


平成維新 (講談社文庫)

平成維新 (講談社文庫)

  • 作者: 大前 研一
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1991/02
  • メディア: 文庫



訣別―大前研一の新・国家戦略論

訣別―大前研一の新・国家戦略論

  • 作者: 大前研一
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2011/11/04
  • メディア: 単行本



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「ジェフ・ベゾス 果てなき野望」 ブラッド・ストーン [本]


ジェフ・ベゾス 果てなき野望

ジェフ・ベゾス 果てなき野望

  • 作者: ブラッド・ストーン
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2014/01/08
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


★★★

アマゾンって、本当に便利ですよねー。
プライム会員でもないのに、前日の晩に頼んだものが翌日には届いたり、ペン1本からでも送料無料なのに、一般的な小売よりも値段が安かったり。

そういったサービスやとんでもない品揃えに加えて、マーケットプレイスやワンクリック、パーソナライゼーションに基づく的確なレコメンドなどの機能も充実。
ソフトだけでなく格安なタブレット「Kindle」というハード、はたまた業者向けのフルフィルメントサービスやAWS(アマゾンウェブサービス)まで、アマゾンは世界一の小売業となるべく、爆進している印象があります。

しかし、結果だけを見るとスマートですが、実際は白鳥が湖面下では足をバタバタさせているように、アマゾンも急激な成長に伴って、混乱に次ぐ混乱の中をかき分けてきています。

アマゾンがドットコムバブルも乗り越えて、成長し続けられるのは、「顧客第一主義」「エブリシングストア」という長期的ビジョンを掲げ、ブレない経営者がいたからだと多くの社員や関係者が証言しています。

経営者の名は、ジェフ・ベゾス。
カリスマ性のあるリーダーシップで、従業員を率いてきたのかと思っていたら、違いました。

気に入らないことがあれば喚き散らし、人をこき使い、罵倒し、すぐクビにします。
スピードこそが命だと社員のけつを叩きまくる結果、激務に次ぐ激務、しかも倹約が文化の一つであり福利厚生は少ない一方で給与は高くなく、多くのエンジニアはグーグルに逃げ出します。

また、アマゾンはビジョン達成の為には、競合を徹底的に叩きのめします。
仕入先がアマゾンの要求に従わない場合はカートが表示されないなどアルゴリズムを変えて売上を落とす、買収のターゲットとなった先は体力勝負に持ち込み追い落とす、マーケットプレイスへ出店された品物の売れ行きが良ければ自社で扱い始める、Kindle発売時には出版社を裏切ってベストセラーを含む電子書籍を9ドル99セントで売り出す。

とにかく顧客を喜ばすという使命の為には手段を選びません。

グーグルやアマゾンは、30%台や20%台の利益率の高さが特徴ですが、アマゾンの強みは「利益率の低さ」です。
安値で競合をぶっちぎり、投資に投資を重ね、他者が追随できなくさせているのです。

拡大に次ぐ、拡大。
今後のアマゾンはどうなるのでしょうか。

アマゾンは、そのうち、配送トラックを保有するようになる?
アマゾンは試験的に行っている食料品配送サービスを拡大する?
アマゾンはいつの日か、携帯電話や、インターネット対応のセットトップボックスを発売する?
アマゾンはKindle以外にも自社開発商品を販売する?

その答えはイエスであると著者は答えています。
本書は、秘密主義のアマゾンとジェフベゾスが、そのベールを明かした力作となっています。


ジェフ・ベゾスはこうして世界の消費を一変させた (PHPビジネス新書)

ジェフ・ベゾスはこうして世界の消費を一変させた (PHPビジネス新書)

  • 作者: 桑原晃弥
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2013/10/19
  • メディア: 新書



ワンクリック ジェフ・ベゾス率いるAMAZONの隆盛

ワンクリック ジェフ・ベゾス率いるAMAZONの隆盛

  • 作者: リチャード・ブラント
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2012/10/18
  • メディア: 単行本



アマゾン・コムの野望 ─ジェフ・ベゾスの経営哲学

アマゾン・コムの野望 ─ジェフ・ベゾスの経営哲学

  • 作者: 脇 英世
  • 出版社/メーカー: 東京電機大学出版局
  • 発売日: 2011/06/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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「俺のイタリアン、俺のフレンチ」 坂本孝 [本]


俺のイタリアン、俺のフレンチ―ぶっちぎりで勝つ競争優位性のつくり方

俺のイタリアン、俺のフレンチ―ぶっちぎりで勝つ競争優位性のつくり方

  • 作者: 坂本 孝
  • 出版社/メーカー: 商業界
  • 発売日: 2013/04/03
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


★★★

一年ぐらい前まで、世の中のビジネスモデルを知ることが楽しくて、毎週テレビ東京の「カンブリア宮殿」と「ガイアの夜明け」をダビングして、週末にチェックするということを2,3年続けていました。

その中でも強烈だったのが、一流シェフ・高級食材と立ち飲み屋業態をくっつけた「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」です。

例えば、
「俺のイタリアン」の三ツ星シェフか作る、トリュフとフォアグラのリゾット、
「俺のフレンチ」の三ツ星シェフが作る、牛フィレとフォアグラのロッシーニ トリュフソース。

メニュー名だけを聞いても、少なくとも3000円以上が相場かなと思い浮かべますが、前者は1100円、後者は1280円です。

実は高級店であれば原価率は20%前後で、その分内装費にお金をかけ、ゆったりと過ごす為、回転率が低いのです。
一方、「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」は原価率が60%以上。
内装費を抑えるだけでなく、立ち飲みにすることによって、坪当たりの客数と回転率を上げ、売り上げに占める諸経費の割合を極端に落としているのです。

言われてみれば納得のビジネスモデルですが、通常の飲食店の常識は食材原価と人件費を合わせた、いわゆるFL比率が少なくとも60%以下でなければいけないというものがあり、食材原価だけで60%を超えるということは考えられないことです。

その常識を打ち破り、これまで高級店でしか食べれない食材や一流シェフを使って、リーズナブルな値段で食べられるのですから、人気になるのは当然です。


この会社を立ち上げたのが、ブックオフ創業者の坂本孝氏です。

ブックオフのビジネスモデルもシンプルなものです。
定価1000円の本を100円で仕入れて、研磨機できれいにして500円で売る。
3ヶ月経過して売れないものは100円に値段を落としていく。
また、3冊以上同じ本がたまったら100円にする。

中古ビジネスのミソは仕入れです。
本を売りにやってくるほとんどの人は、手間をかけずに、これまで親しんだ本をゴミにするのは避けたいと思って売りにくるので、安くても構わないのです。


この二つだけを聞けば、坂本氏はビジネスモデルを考える天才なのではないかと思えますが、これまでの事業経験は中古ピアノ販売とブックオフの2勝を除けば、10敗であったとこの本で書かれています。
ブックオフについても、納入業者からのリベート問題、セクハラ問題などを週刊誌に暴かれて、会社を追われています。

個人的な直感でも、あまりこの坂本さんは信じられないなーという気がするのですかが笑、高級レストランのシェフがこぞってこの会社に集まってきています。
狭い店で回転数があがるということは、仕込みの時間も長くなり、職場環境としては悪化するのですが、高級店でも低く抑えられている給料が上がるからとついてきているのです。

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