『不格好経営―チームDeNAの挑戦』 南場 智子 [本]
★★★★
その道を極めた人の話し方には、二つのパターンがあると常々思っています。
一つは、素人にも分かる平易な言葉で本質を端的に伝えるパターン。
もう一つは、とっても能力があって偉いのに、全く偉ぶらずユーモアを交えながら、本質を語るパターン。
この本の南場 智子さんは完全に後者。
自虐ネタを織り交ぜながら、DeNAの急成長の物語を面白おかしく語ります。
例えば、アメリカのネットオークション会社の巨人、ebayとの買収交渉のシーン。
売れ、と言う。やだ、と答える。
難しい買収交渉も、一言で言えば、結局そういうこと。
他には上場前のエピソード。
東証との社長面接前のリスクを減らそうと、外出しまいと決めた週末に、洗濯物を抱えて転倒し、額をローテーブルの角に打って、のたうち回ったこと。
そういうユーモアを交えた話し手ほど、最後に真面目に締めて、そのギャップに聞き手はカッキーンとヤられることが多いのだけど、本書もそう。
DeNAと聞いて、「なんだ、出会い系のネット企業か」「どうせパッと出のゲームの会社だろ」とタカをくくっていたら、最後はその熱い想いにやられてしまうのでご注意を。
世界ナンバーワンというシンプルな目標に、斜に構えずにこだわり、日本初のチームとしててっぺんに挑戦しよう。そこに集中することがチームDeNAの使命だと思っている。
マッキンゼーという、頭の良さだけでは1,2を争うブランド企業から起業し、売上2000億、営業利益率35%を超える東証1部上場企業を創り上げた女社長と聞けば、誰もが心の敷居を高くするもの。
そこを、あえて自分の弱みや恥をさらけ出しても、会社のファンを作ろうという試みは見事に成功しています。
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