SSブログ

生活保護の実態 [よのなか]

生活保護について、人気お笑い芸人の母親が生活保護を受けていたことで注目を集めましたが、それ以前から不正受給のニュースをよく聞きます。
その一方で、雨宮処凛の書籍を読んで、生活保護を断られ、この日本で餓死する人がいるという事実に少なからず衝撃を受けました。

排除の空気に唾を吐け (講談社現代新書)

排除の空気に唾を吐け (講談社現代新書)

  • 作者: 雨宮 処凛
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/03/19
  • メディア: 新書



生活保護は、憲法で守られた国民の権利のはずですが、なぜ受けられない人がいるのでしょうか。
【日本国憲法 第25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する】

そんな問題意識があった中、ジャストタイミングで新書が出ていたので、買って読みました。

生活保護の謎(祥伝社新書286)

生活保護の謎(祥伝社新書286)

  • 作者: 武田 知弘
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2012/08/01
  • メディア: 新書


***

生活保護というのは本来は国の業務ですが、運用は自治体に任されています。
生活保護費の3/4は国が出しますが、残り1/4は自治体が負担します。
実際は地方交付税の中で賄うという形なので自治体としては負担が大きく、なるたけ生活保護受給者は減らしたいというのが本音の所です。

そこで、知識が少ない弱者に対して、自治体は難癖をつけて申請させないようにしているのです。
逆に言えば、申請をされると、一定条件を満たしていれば、支給せざるを得ないのです。
(憲法で定められているのですから、当然です)

一定条件とは、①預貯金が半月以下、②月収がおおよそ12万円以下の主に二つです。

その為、若かったり、仕事をしていたり、借金があったり、ホームレスであっても、上記を満たしてれば受給できることになります。

ただし、生活保護は借金の返済には使えないので、借金があると役所から難癖をつけられる易くなります。
また、住所不定のホームレスだと、違う自治体で申請するように回されがちになります。
その為、この本では、生活に苦しくなり、ヤミ金などからお金借りて追い立てられてホームレスになる前に、申請に行くことを薦めています。


不正受給も餓死事件も最大の要因は役所の怠慢である、と著者は断罪しています。
また、一旦生活保護を受けると、働きだしても収入の大半が控除され手元に残らないことから勤労意欲が失われ、生活保護に浸かりきってしまう制度の問題点も指摘しています。

私個人としては、狭い意味では制度不備、広い意味では行政の遅れだと感じます。

税金や社会保険料の納付者としては、不正受給や無気力労働者に対する支給は無くして貰いたいですが、この日本で餓死者が出るようなバカなことがあってよい訳がありません。


nice!(6)  コメント(6)  トラックバック(0) 
共通テーマ:資格・学び

韓国企業の強みと弱み [よのなか]

韓国企業の躍進がまだまだ気になる為、『なぜ韓国企業は世界で勝てるのか』を読みました。

なぜ韓国企業は世界で勝てるのか (PHP新書)

なぜ韓国企業は世界で勝てるのか (PHP新書)

  • 作者: 金 美徳
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2011/12/16
  • メディア: 新書


韓国企業といっても、韓国の四大財閥-サムスン、ヒュンダイ自動車、SK、LG-が韓国経済において圧倒的な影響力を持っており、2010年の合計売上高47兆円が韓国GDP90兆円に占める割合は51.8%に達しています。

韓国企業の経営スタイルは、マーケットを重視する「マーケティング指向経営」で、これに対して日本企業は技術を重視する「モノ作り指向経営」です。
海外展開においては、韓国企業は現地ニーズにしたがって韓国モデルをどんどん修正する「現地化」に対して、日本企業は日本モデルをそのまま輸出する「日本化」です。

投資戦略では、韓国企業が「韓国内で稼いだ利益を海外に注ぎ込む投資パターン」に対して、日本企業は「海外で稼いだ利益を日本国内に再投資するパターン」です。
韓国は、人口が約5千万人と国内市場が中途半端な規模なので、海外市場に頼らざるを得ません。
そのため海外投資資金は、国内販売製品を海外販売製品よりも高い価格で販売することによって国内で稼いでいるのです。
これは、韓国内で企業の整理統合が進み、プレイヤー数が少ないので可能となっています。

プレイヤー数が少ないことは、「官民連携による海外市場開拓」も行い易くしています。
韓国貿易が韓国GDPに占める割合は2010年で88.5%にも達し、韓国企業は貿易主導の経済政策に頼っています。
2009年12月にUAEのドバイで受注した400億ドル規模の原発建設プロジェクトでは、日米連合やフランス連合などを抑えたことで当時注目を集めました。


一方、『オーディション社会』で見たように、韓国経済は多くの問題を抱えており、その根は深そうです。
たとえば、韓国の経済発展と企業躍進の裏では、多くの国民が犠牲になるという社会問題だ。企業が生産拠点を海外に移しているため、国内の雇用は少ない。また、熾烈な競争をくぐり抜けて一流企業に入社しても、失敗すればすぐに解雇される。社内競争に敗れた人も次々と退社し、定年も事実上50歳代前半となっている。中途退職した人の大半は、飲食店などの自営業で生計を立てているが、これらの個人商店も乱立していることから、食べていけないのが現状である。
このような競争社会で子供に勝ち抜かせるた為に教育熱が度を越しており、教育費もかさむため、夫婦は産む子供の数まで減らさざるをえず、出生率は世界最低水準となっている。したがって韓国経済と韓国財閥の躍進は、国民の血で支えられていると言っても過言ではない。今後、さらなる躍進を図るためには、国民の犠牲と経済格差をどれだけ解消できるかが重要な課題となる。


好調な韓国企業を支えているのは、日本の部品産業であったりと、日本と韓国はもはや好き嫌いでは切れない関係になっています。
韓国から学べる部分は謙虚に学ぶ一方で、日本独自の強みを活かしたグローバル戦略を考えていく必要がありそうです。
nice!(5)  コメント(5)  トラックバック(0) 
共通テーマ:資格・学び

韓国の熾烈な競争社会 [よのなか]

今、韓国と言えば、
ソニーやパナソニックを完全に上回った感のあるサムスン、
ブランド力がうなぎ上りの現代自動車、
日本だけでなく世界を席巻するK-POP
など、勢いがあって強烈な光を放っています。

しかし、光が強烈であればあるほど、その背後にできる影は色濃くなっているはずです。
韓国勢の躍進を耳にすればする程、その影の部分も知りたいと思うようになっていました。

共同通信社でソウル特派員であった著者が書いた『オーディション社会 韓国』では、その一端を垣間見ることができます。

オーディション社会 韓国 (新潮新書)

オーディション社会 韓国 (新潮新書)

  • 作者: 佐藤 大介
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/06/15
  • メディア: 単行本



韓国で人々は様々な競争にさらされていて、韓国躍進の原動力ともなっています。

その中で、多くの人たちが幼少期から味わうものが「教育」です。
「いい大学」に入れば、「いい会社」に入れて、「いい人生」が送れるという「学歴信仰」は日本でも同じですが、韓国人の「学歴信仰」の背景にあるのが1997年の「IMF危機」です。
通貨ウォンが暴落し、国際通貨基金(IMF)の管理下に入ることを余儀なくされたのです。

中小企業を中心に倒産が相次ぎ、失業者や自殺者が増加。
そうした悪夢を繰り返さないために、韓国は競争力増加の路線を歩み出します。

豊富な知識と強力なリーダーシップを持った一部のエリートたちが、国民生活を引き上げる原動力となるとして、トップエリートを生み出すだめの競争を容認したのです。
「一人の人材が、数十万人を救うことができる」のです。

IMF危機で苦い経験をした親達も子供に同じ思いをさせまいと、子供の教育の為に家計の大半を投入し、子供達を過熱した受験競争に追い立てます。
内需が限られている韓国では、就職や昇進には英語能力が欠かせない為、母子に英語留学をさせ父親だけが韓国内に残り仕送り生活を続ける「キロギアッパ」と呼ばれる家庭も増えています。

教育熱は少子化ももたらしました。
2009年の韓国の合計特殊出生率は、日本の1.37よりも低い、1.15でOECD加盟国の中で最低水準です。
日本と同じように、そして日本以上に、教育費負担が養育の重しとなっているのです。


IMF危機は職場でも大きな変化をもたらしました。

正規社員はそれまでの年功序列が改められ、容赦なく首を切られて、非正規社員に置き換わりました。
一方持たざる若者は、必死に受験競争をして入った大学でも、就職活動に有利になるようにスペック集めに奔走し、それでも正社員に採用されない人が増えています。
年功序列制度が崩れ、さらに「労働力の流動化」として正社員の数が減少していく。正社員の代わりとして再雇用されるのは、ほとんど非正規雇用の職員だったのだ。
グローバル市場で生き残るために「選択と集中」を政府自らが進めた結果、サムスンのような巨大な企業は強くなって世界で生き残ったが、大企業に入ることのできない大多数の二十代は、待遇の悪い中小企業か、非正規労働者になるしかなかった。新自由主義のもと、経済は年4~5%成長と回復したが、大企業とは無縁の9割以上の若者は見捨てられた形となったのだ。


例え大企業に入っても、飽くなき競争が待っています。
IMF危機で終身雇用が崩れて、業績と雇用が連動する競争意識が植え付けられました。
部長に昇進しても、役員になれない者は「名誉退職」と言う名の解雇にあいました。
IMF危機から回復した今でも、業績が下位になれば「解雇の対象」というプレッシャーの中で働いているのです。

一生涯競争にさらされ精神的に追い立てられ、格差が拡がり敗者復活が許されない閉塞した社会となった結果、2010年5月にOECDが発表した統計では10万人当りの自殺率は21.5人と韓国がトップ(日本は19.1人の3位)となっています。


少子化で高齢化社会が進み、非正規労働者が増加し格差が拡がり、疲弊した若者や中年が社会の至る所にいる、という社会の歪みは、社会保障費の増加、内需の減少、生産労働力の低下といった経済活動にも影響を及ぼしてくるでしょう。
躍進の影では、ある面では日本よりひどい状況となっているのです。


nice!(5)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:資格・学び

「右翼」とは?「左翼」とは? [よのなか]

現代では「左翼」「右翼」がよく分からなくなってきています。
戦争もしくは戦前の記憶が遠ざかっていること、55年体制、冷戦構造が崩壊したことが理由です。

そうした「左翼」「右翼」って何ですか?という若者に向けて書かれた『右翼と左翼』は非常に興味深い内容となっています。

右翼と左翼 (幻冬舎新書)

右翼と左翼 (幻冬舎新書)

  • 作者: 浅羽 通明
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2006/11
  • メディア: 新書


「右翼」と「左翼」の語源がフランス革命当時、国民議会で保守派と急進派のそれぞれ右方と左方の席を占めたことからきていることはトリビア的知識として有名です。

しかし、本来的な意味を考えるとき、「右翼」「左翼」の誕生は人類史から見ても重要です。

それまで、絶対王政や貴族や僧侶など特権階級に権力が集中していたものが、徐々に平民(当時はまだブルジョア階級)の声を無視できなくなっていったのです。
フランス革命時、王の権限を守ろうとしたのが右翼に位置した保守派、絶対王政批判をしたのが左翼に位置した急進派だったのです。

フランス革命は王党派の盛り返しや急進派の分裂はありましたが、イギリスやアメリカ、欧州諸国、そして日本にまで民主化(普通選挙)の波が拡がりました。


絶対王政批判から、立憲主義=自由主義へ。さらに進んで民主主義へ。そのまた先まで進み社会的民主主義へ。そして、さらにはるか彼方に社会主義、共産主義を目指す。このように、それまで先進的で主流だった立場を、次々と古いものと化しつつ進展してゆくのが、「左」だったのです。

つまり、「歴史が進歩している」「その進歩とは『自由』『平等』の実現をいう」とする考え方を前提に、その「進歩」をより先取りしようとする立場が「左」「左翼」で、「伝統」を守り「進歩」を押しとどめようとする立場が「右」「右翼」なのです。
こうした「伝統」的な世の中の仕組みには、近代以前に起源を有する王制、天皇制、身分制などが含まれ、それらは大方、「階層的秩序」「絶対的権威」を含んでいます。


明治政府は、徳川幕府体制を廃して、新しく近代的統一国家を形成するにあたって、求心的なシンボルとして有効な天皇や国粋的なイメージ(「右」)も欧米の近代文化(「左」)も、ともに必要としたのです。
昭和の「右翼」は、明治の権力者が作り上げた天皇を崇拝し浄化させ、戦争へ突入していきました。

戦後、主に占領軍によって起草された日本国憲法は、象徴天皇制と議員内閣制を明文で規定し、戦前の権力内「右」は、反体制の「右翼」へ押し出されました。
その後、米ソ冷戦の始まりによって、占領軍の日本統治と改革方針は大きく転換され、逆コースの到来となりました。
日本は西側諸国、アメリカ資本主義の最前線で、アメリカの傘の下「左」も「右」も巻き込んで経済活動に邁進していったのです。

【関連記事】
ロスジェネ世代の憂鬱と野望


nice!(6)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:資格・学び

先送りできない日本 [よのなか]


先送りできない日本  ”第二の焼け跡”からの再出発 (角川oneテーマ21)

先送りできない日本 ”第二の焼け跡”からの再出発 (角川oneテーマ21)

  • 作者: 池上 彰
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/05/10
  • メディア: 新書


私が中学生の時に、日本の借金が555兆円を超えたとかいう記事を見て以来、日本の借金問題には興味を持っていました。
一人当たり〇百万円の借金とか、GDP比〇%の借金とか言ってて、誰も本気で騒がないけれど大丈夫なのだろうかと。

しかし、国の借金に関する見解は人によってけっこう違う。
「もう実質破綻している」とか、「まだまだ大丈夫」とか。

そこは、池上彰さん。
分りやすく解説してくれています。

「国および地方」の長期債務残高は現在900兆円。
http://www.kh-web.org/fin/
日本国債の95%は国内で保有。
個人の金融資産1400兆円のうち400兆円は借金なので、純資産は1000兆円。

つまり、日本政府が発行する国債のほとんどは銀行を通して日本国内で消化されてまだ購入余力があり、政府が所有する対外資産200兆円もあるので、今しばらくは大丈夫。


しかしながら、限界も見えてきました。

増税、大幅なインフレ、共に時の政権にとってはやりたくないものですし、国民も避けたいもんですが、日本は先送りできなくなってきています。


幸田真音さんの小説『日本国債』は、敏腕国債ディーラーの死をきっかけにディーラー達が国債購入をボイコットして、国債のあり方を世に問うというものでした。

そろそろ本気で国債のあり方を検討すべき時かもしれません。

nice!(6)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:資格・学び

堺屋太一氏が語る戦後日本型システム [よのなか]

元通産官僚で、第55〜57代の経済企画庁長官を務め、戦後日本のエポックメイキングとなった1970年の「大阪万博」の企画・実施に携わった作家の堺屋太一氏は、戦後日本社会を支えた「三角形」があると言います。

①官僚主導・業界協調体制
②職縁社会・核家族
③日本式経営(終身雇用・年功賃金)


平成15年から働き始めた僕なんかは、①の所がピンと来ないのですが、以下詳細。
不足していた外貨(ドル)の割り当てや外国技術の導入、そしてなによりも生産設備の拡大には、通産省の許認可が必要だった。官僚の役割は、不足物資の配給から、過剰施設の抑制と過当競争の防止に、つまり供給制限の方に替わったのである。
通産省だけではない。運輸省も建設省も農林省も文部省も、同じことをしていた。そしてその背後には、予算と金融を握る大蔵省がいた。通産省など各省庁が「好ましくない」と見なした設備投資には、政府金融機関ばかりか、市中の金融機関にも融資しないように指導していた。官僚機構の支持や援助なしには、民間企業も事業ができない体制が出来上がったのである。
民間企業の側も、これに対応した。主要業界はそれぞれ全国組織(業界団体)を作り、官庁の示す設備投資や資金割り当てを談合によって配分することにした。そうすれば、新規参入者によって競争が激化する恐れもないし、設けた設備が過剰になったり、生産した製品が売り残ったりする心配もない。官庁の計画通りに生産すれば、官庁の指示通りの売り切れる。しかもその価格は、業界団体の期待する「適正価格=コスト+適正余剰」である。
こうして「官僚主導・業界協調体制」が生まれた。ここではすべての既成企業は、現有する規模に按分した形で設備割り当てを受けて成長、設けた施設は計画通りに稼働し、生産された製品は過不足なく適正価格で売れる。
企業は安定した収益をあげて拡大、従業員の地位は安定し、給与は年々上がる。上がった給与はコストとして、確実に価格に転嫁できる。官僚がコストを適正価格に折り込んでくれるのである。

山崎豊子の『華麗なる一族』を思い出します。


三つのサブシステムとして、以下のものをあげています。

①金融系列の企業集団
②没個性型の大量教育
③東京一極集中の地域構造

以下、②③についての補足。
太平洋戦争が始まる直前、日本は国際情勢が厳しくなる中で、限られれた資本と少ない資源で、できるだけ多くのモノをつくろうとした。そのためには、規格大量生産を確立することが重要だと考えました。
そのために三つのことをしました。第一は産業経済政策。官僚の主導であらゆる生産を規格化する。第二には教育。日本人全部を規格大量生産に向いた人間にする。そして、第三には地域構造。日本の国全体を規格大量生産に向いた配置にする。
第一の生産規格化は戦後もJIS規格などで引き継がれています。電力や鉄道の整備にも道路や建物にも、規格基準をつくりました。
第二の教育。どんな人間が大量規格生産に向いているのかというと、その一つは辛抱強いこと。その二は協調性。その三は共通の知識と技能の習得です。その4は個性と独創性がないこと。日本では、個性は不良だと摘発する。 第三の政策は東京一極集中の地域構造です。

なるほど、戦中から日本型システムというのは、出来上がっていったのですね。


第三の敗戦

第三の敗戦

  • 作者: 堺屋 太一
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/06/04
  • メディア: 単行本


nice!(4)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:資格・学び

日本のホワイトカラーの生産性って低いけど、これでよく経済大国になれたなと感じる件 [よのなか]

事務所で働いていると、自分も含めて、日本人のホワイトカラーの生産性はつくづく低いなーと感じます。

例えば、これだけ普及したパソコン一つとっても、エクセル、パワポを中級レベル以上で使いこなしている人がどれだけいるでしょう。
論理的思考方法やフレームワーク的考え方で、問題に対するアプローチ方法に優れているのは、「自己啓発」に熱心なむしろ若手の方です。

会議はルールが決められておらず、内容が行ったり来たりで進まない。
仕事を「仕組み化」する工夫をせずに、労働量の投入によって解決しようと、あくせくしています。


製造業の生産性は、絶え間ない改善活動によって、高い人件費を賄うだけの効率性を維持してきました。
しかし、ホワイトカラーの生産性が低い!

実際、公益財団法人 日本生産性本部の「労働生産性の国際比較」でも、その結果が顕著に表れています。
http://www.jpc-net.jp/
プレゼンテーション1.gif

(右図)製造業はOECD加盟国22ヵ国中6位、主要先進国7国中では米国に次ぐ2位となっています。
一方、(左図)日本全体の生産性はOECD加盟国33ヶ国中、22位と経済大国らしからぬ結果となっています。


これには、いくつかの理由が考えられます。

・ホワイトカラーは直接的に競争にさらされる機会が少なく、生産性向上の動機づけが薄いこと
・会社への忠誠心を植えつけられている為、生産性の低さを長時間労働(サービス残業)でカバーしてきたこと
・他国と異なり、正社員の首が簡単に切れない為、社内失業と呼ばれる余剰人員を抱えていること

終身雇用で守られている正社員より流動性が高い非正規社員の人の方がスキルが高く、不景気によって「ハケン」の人がいなくなって事務が回らなくなった、というのはどこの職場でもあったんじゃないでしょうか。


最近では、就職活動対策として、大学側でビジネススキルを教える所も増えてきたようです。
採用側からすると、半年やそこらで身につくビジネススキルではなく、正社員として一生当社に貢献できるかというポテンシャルで判断する訳ですから、小手先の対策も違うよね~という気がしています。

かといって、個々人の努力によってホワイトカラーの生産性が左右されるというのは、心許ない。

これだけ大学進学率が上がり、サラリーマンになる人がほとんどを占めるのであれば、全ての大学で1年程みっちりビジネススキルを教えた方が日本経済の底上げに大いに役立ちます
大学側とすれば、大学生は学業をしっかり勉強する期間であるというタテマエ論を出してくるでしょうが、ほとんどの学生は適当に勉強して単位を取れさえすれば遊ぶことに熱心(←僕もそうでした^^;)なんだから、日本経済の為に義務化してもいいんじゃないでしょうか。

nice!(3)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:資格・学び

格差社会を無くし、幸せを増加させる為に必要なこと [よのなか]

「格差社会」が叫ばれて、久しくなります。

正社員と非正社員、労組員と非労組員、都市と地方・・・
本当にそれらは最近出てきた問題なのでしょうか。
経済が好調な間は終身雇用が守られてきたから、今までは問題にならなかったのでしょうか。

大前研一さんは著書で、戦後日本が急速に経済がこうして強くなった理由の一つは「雇用のフレキシビリティ」があったことと述べています。
総合電気メーカーなどは、大都市圏の労働コストが高くなったら東北や九州の田舎に工場を移し、それを子会社化した。子会社であればローカルの賃金水準でよいからだ。しかも、工場では期間工、派遣、パート、下請け外注など非正規労働者が働いていた。つまり、日本の雇用は少なくとも本社(中央)の正社員、子会社(地方)の正社員、そして非正規労働者という三重構造になっており、そのおかげで中国に対しても最後まで競争力を維持できたのである。 
 【最強国家ニッポンの設計図】より

人事コンサルタントの城繁幸氏も、「日本は判例によって正社員の解雇を実質的に禁止している為、高度経済成長期の雇用調整弁の役目は女性や中小の下請け企業、日雇い労働者が果たしてきました」と述べています。

昔から非正規雇用は多く存在しており、日本経済の中で機能してきたのです。


それでは、なぜ、最近問題視されるようになったのでしょうか。


統計局の統計で正規・非正規雇用者推移を見てみると、明らかにここ最近非正規雇用者数が増えていることが分かります。
スライド2.GIF

雇用者数が増える一方で、自営業者の数や農業や林業など一次産業従事者は減っています。
スライド4.GIF
スライド1.GIF


つまり、労働者人口が増加(平成10年がピーク)する一方で、商業店舗の大規模化による自営業者の減少・農業大規模化による農業就業者数の減少によって受け皿が少なくなり、非正規雇用者が増加したのです。
グローバル化による経済合理化で働く場所の多様性は失われ、非正規という社会的弱者が増えているのです。

かといって、非正規を増やし人件費を減らす経営者は悪人かというと、日本の経営者はアメリカの経営者のように法外な役員報酬は取らず自分の懐を肥やしている訳でもなく(一部例外あり)、中国など新興国との戦いに勝ち正規社員の雇用を守るべく必死な状態です。

経済全体の成長が特効薬でしょうが、民主党の経済成長戦略が上手くいっていないように、マーケット全体が成熟した日本では難しいです。
収入は多くなくても、ドラッガーが言うようにNPO法人で働く人や手間はかかるけど価値が高い有機農業従事者を増やすなど、働く場所の多様性確保がGNH(幸せの総量)増加の解になります。

nice!(7)  コメント(7)  トラックバック(0) 
共通テーマ:資格・学び

占領下日本の教訓 [よのなか]

戦前の軍国主義ニッポンや、戦後の経済成長ニッポンは語られることが多いのですが、
その転換期となったポツダム宣言受諾後の占領下日本についてあまり聞く機会がありません。

その理由として、以下のようなことが推測されます。
・1945年9月2日から1952年4月27日までの6年8ヶ月間、他国に占領されていた事実、国家主権を失っていた事実を避けたいからか。
・軍国主義から民主主義に考え方を一変したことに対するとまどいや後ろめたさからか。
・アメリカ人に対する態度が、「鬼畜米英」から「ギブミーチョコレート」に変わったやるせなさからか。
・闇市場、下山事件、東京裁判、レッドパージ、逆コースなど不透明で暗い時期だからか。
・はたまた、占領国アメリカが意図的に占領していた事実を思い出させないようにしているからか。

どちらにしても、GHQやマッカーサーの存在は知っていても、現在日本では戦後占領下に日本の方向性ができたことはあまり意識しないように感じます。


GHQは日本の非軍事化と民主主義化を占領政策の二本の柱としました。

日本人の意識改革を行う為に、まず日本人の「大東亜戦争観」を変える必要がありました。
GHQは「太平洋戦争史」をまとめ、日本の新聞各紙が企画記事として伝えました。
「陸軍を中心とした軍部の暴走により満州事変が始まり、極東での侵略行為を国民に真実を伝えることなく進めていった結果、悲惨な敗戦に至った」というものです。
ラジオでは「真相はこうだ」という番組で、日本人に歴史観を伝えていきました。

つまり、悪いのは一部陸軍の責任であって、真相を知らなかったあなた達国民は悪くない。
ワルモノは「東京裁判」で罰する。
天皇も悪くないが、国民に主権があればこうはならなかった。
二度と悲惨な戦争を起こさない為に、非軍事化と民主主義が必要なのだ、という流れに持っていこうとしたのだと思われます。

実際に、日本の植民地政策は「遅れてきた帝国主義」と言われるように、明らかに歴史的後進性をともなっていました。
日本のアジアでの侵略やその統治は、先進的な帝国主義の初期の暴力型をそのまま追随していたために、20世紀につくりあげていた「支配と被支配のルール」をまったく無視することになった。

しかし、日本国憲法の制定がGHQメンバー主体で行われたことと併せて、日本人の「太平洋戦争史観」がある程度アメリカから植え付けられたものであることは意識する必要があるのでしょう。


【関連記事】
空気の研究
なぜ日本は戦争を始めたのか -前編-
なぜ日本は戦争を始めたのか -中編-
なぜ日本は戦争を始めたのか -後編-


占領下日本の教訓 (朝日新書)

占領下日本の教訓 (朝日新書)

  • 作者: 保坂正康
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2009/08/07
  • メディア: 新書



nice!(5)  コメント(7)  トラックバック(0) 
共通テーマ:資格・学び

カロリーベースの食料自給率 [よのなか]

多くの知識人が指摘していることですが、日本の食料自給率の低さ(=40%弱ぐらい)はカロリーベースで試算しているからです。

総合食料自給率の計算方法には2つあり、日本が採用しているカロリーベースのものと、生産額ベースのものがあります。
20080209_468990.jpg
【kousyoublogさんより引用】

H17年度時点の自給率で、カロリーベースで40%なのに対し、生産額ベースだと69%に跳ね上がります

また畜産物のカロリーベースの自給率の計算は、飼料の自給率を含めた計算をする必要があります。
そのため、品目別自給率が高くても、カロリーベースに換算すると非常に低くなってしまう場合があります。
例えば、2003年度の鶏卵の品目別自給率が96%と高いにもかかわらず、採卵鶏に対する飼料自給率が9.7%と低いために、カロリーベースの自給率としては9%という非常に低い水準にしかならない点に注意する必要があります。

最後に知識人が指摘するのは、石油の問題があります。
日本の石油の備蓄は約180日分しかないので、結局日本が戦争状態などで石油が輸入できなくなる自体となれば、食料自給率をいくら高くしても、トラクターなどを動かす燃料が先に無くなってしまうので、意味がないというのです。


以上をもって、自給率の低さを強調するのは農林水産省による国民誘導であるというものです。


確かにこの指摘は一部分では正しく、カロリーベースでの自給率の低さを強調し国内農業を守ろうとする行政と、少しでも安ければ外国産でもOKという消費者との確執を生んでいます。

一方で、石油などのエネルギーがなくても人手と農耕地さえあればなんとか食っていけるというアナログ的思考と、結局は人間が生きていく為に必要なのはお金(生産額)ではなくカロリーであり、食料自給率の低さは外交的弱みにもつながるのではないか、という反論も可能です。

***

ここで私が加えて指摘したいのは、カロリーベースを計算する際の分母となる「国民一人1日あたりの供給熱量」です。
これは日本人の口に入ったカロリーではなく、供給されたカロリーです。
つまり、食べ残しや廃棄が計算に入っていないのです。
06sh0101280f.gif
上図の青線が供給熱量、赤線が摂取熱量=日本人の口に入ったカロリーで、その差が食べ残しや廃棄(計算方法が違うので目安)となります。


私としては、行政が日本国家のことを本当に考えるのであれば、食料自給率を上げる為に食べ残しや廃棄というものをいかに減らすかという点を真剣に考えていくべきだと思います。

ただ、電気会社が自社の売上を伸ばす為にオール電化などを推進し、原発事故がなければ決して節電などと言わなかったのと同じで、食料の無駄を見直すことは農業の生産量を減らすことと同義となり、引いては自らの縄張りが縮小することになるので農水省は決して食料の無駄見直しは言わないでしょう。


nice!(3)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:資格・学び

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。